メッセージ

2001年09月25日の記事

2001/09/25(火)「ラッシュアワー2」

 ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの刑事コンビが活躍するアクションの第2作。前作を僕は見ていないが、タッカーがメインでジャッキーはサブだったらしい。今回は名前も同時に出るから対等の扱いである。最後にNG集があることから見てもジャッキーの意見はかなり採り入れられたらしく、ジャッキー主演の映画と言っても通るだろう(ジャッキー自身、「前作は嫌いだ」と公言している)。

 香港のアメリカ大使館の爆破で2人が殺害される。事件には偽札作りの香港マフィアが絡んでいるらしい。香港に休暇できていた2人は否応なしに事件に巻き込まれる。組織のボス、ジョン・ローンに目星を付けたジャッキーはローンを船上で追いつめるが、なんとローンの部下の殺し屋チャン・ツィイーがローンを撃ち殺してしまう。事件は振り出し。2人は手がかりを追ってアメリカへ帰る。

 ジャッキーのアクションは相変わらず素晴らしいが、スケール的にダウンしているのは年齢(47歳)からいっても仕方ない。「フー・アム・アイ」がジャッキー最後の輝きになるのでは、との思いをあらためて強くした。全体的にあまり締まらない話で、監督のブレット・ラトナーの演出もルーズだが、それでもそこそこ面白く見られるのはジャッキーの人徳というべきか。クリス・タッカーのけたたましさに予告編では閉口したけれど、通して見るとそうでもなかった。この人、エディ・マーフィーと同じようなタイプなのだが、声が甲高いので余計にけたたましく感じる。大して魅力もないのになぜこういう俳優がジャッキーと肩を並べるのかは分からない。

 で、この映画で一番注目したのはもちろん、チャン・ツィイー。だが、しかしこれまた予告編で見て危惧していたとおり、化粧が濃く、いつもの清楚な魅力はなかった。アクションはさまになっていたが、アクションだけで起用されるべき女優ではないでしょう。

 IMDBによると、ツィイーは今後3作公開が控えている。どれも中国系の監督作で、ツイ・ハーク「The Legend of Zu」、ウォン・カーウァイ「2046」とスン・スー・キム(知らない)「The Warrior」。パンフレットのインタビューによると、

 でも今回アメリカ映画に出演してから、これからはもっと積極的に中国映画に参加しようという気になったの。厳しい状態のなかで、素晴らしい作品を生みだしている母国のフィルムメーカーをサポートしていかなくちゃいけないな、ってね。中国の人たちが、ハリウッド映画だけじゃなくて中国映画も観てくれるようになってほしいので。

で、ハリウッドに定着する気はないのか、という質問には

 実は、その可能性についてはあまり深く考えたことがないの。わたしの英語がいまよりずっとうまくならなければ、どのみちたいした役もないしね。とにかくいまは有名無名に関わらず、中国の映画監督をサポートしたいという気持ちでいっぱいなの。

 賢明な考え方だと思う。パンフレットにはジェット・リー、マギー・チャンと共演の「Heroes」というチャン・イーモウ監督作も予定に挙がっている。ハリウッドがすべてじゃないよ。中国映画でまた魅力を発揮してほしいものだ。

2001/09/25(火)「東京マリーゴールド」

 林真理子の短編「1年ののち」を市川準が田中麗奈主演で映画化。市川準の映画を見るのは久しぶりだが、これは傑作。

 契約社員の酒井エリコ(田中麗奈)が合コンでエリート・ビジネスマンのタムラ(小沢征悦)と出会う。酔っぱらったタムラを介抱したエリコにタムラは「携帯の番号もらってくれないか」と手渡す。なんとなく電話をかけたエリコはタムラとデートするが、そこでタムラにはアメリカに留学している恋人がいることが分かる。もう会うこともないと思っていたが、ある小劇場で偶然再会。タムラを本当に好きになってしまったエリコは「彼女が帰ってくるまでの1年間だけでいいから、わたしとつき合って」と言ってしまう。ここから1年間の期限付きの恋愛が始まる。

 市川準はいつものように淡々と撮っているが、田中麗奈の魅力は画面の隅々まで弾けている。タムラとの何気ない生活ぶりもいいのだが、ラスト近く、喫茶店での場面の鬼気迫る表情には脱帽した。この場面、田中麗奈自身、「自分で見ても衝撃的だった」と語っている。アイドルではなく映画女優として大きく羽ばたく逸材であることを田中麗奈はこの場面で証明した。

 1年間の期限付きだからラストは別れるか、続けるかの2つしかない。映画もそのように進行するが、その後に絶妙のオチがある。それまでのストーリーを別の視点で見なくてはいけなくなるようなオチ。いや素晴らしい。感心した。これによって映画は単なるラブストーリーではなく、1人の女性の成長を描くものになった。スーザン・オズボーン「ラブ・イズ・モア・ザン・ディス」が流れるラストが晴れ晴れとしてとてもいい。

 タイトルのマリーゴールドは1年で花を咲かせて散ってしまう1年草。期限付きの恋愛とかけているわけだ。正社員になりたいと思いながら、1年間の契約社員であるエリコの境遇も内容と符合している。