2005/10/09(日)「蝉しぐれ」(NHKドラマ)
気になったのでDVDをamazonで買って見た。全7話、315分。いきなり中年の文四郎とおふくが再会するシーン(原作のエピローグに当たる部分)で始まり、25年前を回想し始める構成に驚く。僕が3日の日記に書いたようなことは黒土三男、ちゃんと考えていたのだ。ただ、毎回、回想の形で話が進むと、何だか鼻についてくる。はっきり言って4話目まで(「嵐」「蟻のごとく」「ふくと文四郎」「秘剣村雨」)は極めて平凡な出来で、「やっぱりテレビドラマはダメだよなあ」と悪口を山のように考えながら見ていた。父親の切腹前から大八車で遺体を運ぶシーンまでが描かれる第2話などは映画の方がよほどうまい描写をしている。というか、映画で良かったのはここだけだったので、監督にはテレビの不備を補いたい気持ちがあったのかもしれない。
里村家老の陰謀に絡む5話「罠」と6話「逆転」がいい出来。ここの面白さは主にチャンバラの面白さだ。ちゃんと秘剣村雨も登場する。ここがあまりにいいので、7話「歳月」は付け足しみたいに感じるが、原作には忠実である。おふくが「あの日も今日のように暑い日でした」と語りかけるのは大八車を一緒に引いた日のことであり、この方が蛇に指を噛まれた思い出よりはよほど説得力がある。映画ではなぜ、こういう形にしなかったのか、理解に苦しむ。
全体的な脚本の作りは映画とよく似ている。映画の脚本はここから登場人物やエピソードを削り、時間の制約で語れなかった部分のエピソードを変えただけのように思う。NHKの~金曜時代劇・ご感想掲示板~には映画よりテレビの方が良かったという声ばかりが並んでいる。確かにまとまりでは十分な時間のあるテレビの方が上なのだが、特に前半の描写の深みは映画の方が勝っている。
テレビドラマは基本的に筋しか語れない。見ていて面白い映像というのはあまりなく、映像で語るという方法もこのドラマに限って言えば、希薄だった。そう感じるのはナレーションが多いからかもしれない。もっとも、映画に比べると驚くほど描写がない、というのはどのテレビドラマを見ても感じることではある。
2005/10/09(日)「セルラー」
携帯電話を軸にしたサスペンス・アクション。わけの分からないまま5人の男たちに自宅から誘拐された女(キム・ベイシンガー)が壊れた電話の線を必死につないで、かけた電話がある男(クリス・エバンス)の携帯にかかる。監禁されている場所も分からないので電話が切れたら命がないというシチュエーションの中、アイデアを詰め込んだ脚本がよい出来だ。B級だが、予想より面白かった。なぜ警察に事件を届けられないのかという部分をちゃんと押さえており、あとはジェットコースター的展開で見せる。悪役側にジェイソン・ステイサム、定年を迎えた刑事にウィリアム・H・メイシー。ベイシンガーが老けたのには少しがっかり。
監督は「デッド・コースター ファイナル・デスティネーション2」のデヴィッド・R・エリス。原案は「フォーン・ブース」のラリー・コーエン。脚本はクリス・モーガンだが、製作初期に「バタフライ・エフェクト」のJ・マッキー・グラバーが関わっていたとのこと。クレジットはされていない。