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2021年12月19日の記事

2021/12/19(日)「マトリックス レザレクションズ」ほか(12月第3週のレビュー)

18年ぶりの第4作となった「マトリックス レザレクションズ」は残念ながら、よくある“作らなくても良かった続編”になっています。第3作「レボリューションズ」で死んだネオ(キアヌ・リーブス)とトリニティー(キャリー=アン・モス)を復活させてまで作る必要があったとは思えませんでした。

出来は全然ダメかというと、そんなことはなく、退屈なところも面白いところもあります。映画史に残る大傑作だった1作目と比較するから悪いのであって、普通のSF映画と思えば、そんなに腹は立たないです。

残念なのは第1作にあった目を見張るようなスタイリッシュなアクションや映像が今回もないこと。2作目にも3作目にもこうしたひたすらカッコイイ映像はなかったんですが、ああいう映像の復活を期待するのはやはり無理なのでしょう。キアヌ・リーブスとキャリー=アン・モスが18年の年齢を重ねているのも映像的にはマイナスで、若くて美しかった2人がいたからこそ第1作は成立していた部分もあったのだなあと思わざるを得ません。

監督のラナ・ウォシャウスキーは第4作を作った理由について、両親が相次いで亡くなったことを挙げ、「ある夜、目が覚めて、ひとつの物語を思いつきました。それが、ネオとトリニティーが生き返る物語だった。人生で最も大切なふたりを失ったとき、自分の脳が、同じく人生で最も大切なふたりを蘇らせたんです」と語っています。

「アンテベラム」

パンフレットに「『ゲット・アウト』、『アス』のプロデューサーが新たな衝撃を呼び起こすパラドックス・スリラー」とあります。予告編がネタバレしているという指摘がありますが、ネタバレではないにせよ、語りの順番を入れ替えているので見ない方が良いでしょう。
というか、何も知らないで見た方が良い映画で、その意味でM・ナイト・シャマランの映画を思わせます。内容的にもシャマランの某作品の作りを参考にしていると思えました。
タイトルは「戦前」を表すラテン語で、アメリカ史の文脈では「南北戦争前」を意味するそうです。
アメリカではIMDb5.7、メタスコア43点、ロッテントマト30%とさっぱり評価がありません。

「MONOS 猿と呼ばれし者たち」

サンダンス映画祭など世界の映画祭で多数受賞しているコロンビア映画。南米の高地で8人の少年少女が訓練をしている場面で映画は始まり、徐々に状況が分かってきます。
彼らはゲリラ組織のメンバーで、MONOS(猿の複数形)のコードネームで呼ばれ、人質の女性博士の世話を任されていましたが、敵の攻撃を受け、ジャングルへと場所を移すことになります。そして、ふとしたことで仲間割れが始まる、というストーリー。
監督のアレハンドロ・ランデスは「蠅の王」(ウィリアム・ゴールディング)と「地獄の黙示録」の元になった「闇の奥」(ジョゼフ・コンラッド)の影響を明言していて、確かにそんな感じの映画になっています。意味不明の序盤の方が面白く、話が分かってしまうと、魅力を減じてしまうのが難ですね。

「返校 言葉が消えた日」

白色テロ時代の1960年代の台湾の高校を舞台にしたダーク・ミステリーで、金馬奨12部門にノミネートされ、最優秀新人監督賞、最優秀脚色賞、最優秀視覚効果賞を含む5部門を受賞したそうです。夜の学校で魔物に追いかけられるホラー描写などがあるからダーク・ミステリーなんでしょうが、こうしたホラー要素、まったく余計にしか感じませんでした。
元がゲームなので仕方ないのかもしれませんが、当局から政治的弾圧を受ける教師と生徒たちの描写に絞った方が良かったでしょう。幽霊や化け物よりも白色テロの方がよほど怖いです。
「返校」は「学期が始まる直前に一度学校に帰る日」という意味とのこと。サブタイトルを付けた日本の担当者は語彙不足としか思えず、センスも皆無ですね。