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2022年02月27日の記事

2022/02/27(日)「ドリームプラン」ほか(2月第4週のレビュー)

「ドリームプラン」は女子プロテニスのビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹の父親リチャードを描いた作品。実際と異なる部分があるなど一部ネガティブな批評も耳にしていたのであまり期待していませんでしたが、期待を上回る出来でした。作品賞とウィル・スミスの主演男優賞などアカデミー賞6部門にノミネートされているので、それは当然かも。

リチャードが娘2人をテニス選手にしようとするのはテレビで多額の小切手を受け取るテニス選手を見たからですが、一家が暮らすカリフォルニア州コンプトンは犯罪の巣窟で、練習環境は少なく、良いコーチに指導を受けるには多額の金が必要となるなど多くの困難があります。この困難は黒人差別と重なる部分が多く、それを一つ一つ解決し、アメリカンドリームを実現していく過程は感動的です。所々に胸が熱くなるセリフやエピソードを散りばめたザック・ベイリンの脚本は見事なもので、アカデミー脚本賞にノミネートされました。IMDbによると、ベイリンはマイケル・B・ジョーダン監督・主演で撮影中の「クリード3」の脚本も担当しています。

映画はビーナスのプロデビューの大会までを描いていますが、セリーナは姉以上の活躍をするわけですから、こちらももう少し詳しく描いても良かったのではないかと思いました。

WOWOWで4大大会の試合をよく見ていたのは伊達公子が活躍していた頃なので、ウィリアムズ姉妹が出てくる直前ぐらいまでの時期。映画にも役名で登場するシュテフィ・グラフやジェニファー・カプリアティー、アランチャ・サンチェス・ビカリオなどは懐かしく感じました。その伊達公子が日本語字幕監修を務めています。
監督はレイナルド・マーカス・グリーン。IMDb7.6、メタスコア76点、ロッテントマト90%。

「ナイル殺人事件」

「オリエント急行殺人事件」(2017年)に続いてケネス・ブラナーがエルキュール・ポアロを演じるミステリー。ナイル川を巡る遊覧船の中で起きる殺人事件を描くアガサ・クリスティー原作のリメイクになります。ピーター・ユスティノフがエルキュール・ポアロを演じた1978年版(ジョン・ギラーミン監督)を見ていますので、犯人もトリックも承知しています。そのためか、展開がまどろっこしくて仕方ありませんでした。

映画の冒頭で第1次大戦に従軍しているポアロが描かれ、口ひげを生やした理由や恋人とのエピソードがあり、部分的に緊密なドラマの見せ場もありましたが、演出と構成に少し問題があるようです。

同じ原作の映像化であるデヴィッド・スーシェ主演のテレビドラマ「名探偵ポワロ」(表記はポアロではなくポワロ)の第52話「ナイルに死す」(2004年製作)を見たら、まどろっこしさは感じませんでした。映画より20分以上短い1時間40分弱とコンパクトにまとめてあるからでしょう。このドラマで殺される富豪リネットを演じているのは「プラダを着た悪魔」に出演する前のエミリー・ブラント。撮影時21歳ぐらいだと思いますが、その後のブレイクが納得できる美貌と演技でした。

映画の方のポアロのセリフで「田舎の村でのカボチャ作り」に言及する場面がありました。次の映画化は「アクロイド殺し」を想定しているのかもしれません。これもテレビドラマ第46話で映像化されていますが、ミステリー史に残るあの有名なトリックは使われていませんでした(映像で描くのは難しいからでしょう)。このテレビドラマ全13シーズン70話はU-NEXTで配信されています。

「ブラックボックス 音声分析捜査」

アルプスに墜落し、乗員乗客300人以上が死亡した航空機事故を巡るサスペンスの佳作。当初はイスラム過激派のテロかと思われますが、主人公の調査員が調べていくうちに航空機自体に欠陥があった可能性が浮上してきます。主人公の上司は失踪。フライトレコーダーの音声データにも改竄の疑いが出てきます。

フランス映画らしいラストで、アメリカ映画だったらこうはならないでしょう。主役の調査員を演じるのは「母との約束、250通の手紙」などのピエール・ニネ。主人公の妻で航空機の認証機関に務めるノエミを演じるルー・ドゥ・ラージュは、ぱっと見イザベル・アジャーニやクリステン・スチュワートを思わせる美人女優でした。注目しておきます。