2003/03/14(金)「007 ダイ・アナザー・デイ」
タイトル前に大がかりなアクションを見せるのは007の伝統で、今回も火薬の量はタップリ。その舞台が北朝鮮、敵役も北朝鮮のワル(北朝鮮がワルなのではない。アメリカに留学して悪い考えに染まったという設定で、このあたり、脚本の配慮を感じる)というのが時流を反映している。
40周年、20作目の007。監督のリー・タマホリは、猿でも分かる簡単なプロットをアクションでつなぐというこれまた007の伝統に沿った演出で、まずまずの作品に仕上げた。NSA諜報員役のハル・ベリーのセクシーさや、敵役のトビー・スティーブンス、リック・ユーンの面構えもよい。40周年らしく、過去のシリーズ作品を彷彿させる秘密兵器や設定も出てきて楽しい。ただ、話は「ダイヤモンドは永遠に」を思わせるし、ボンドが拷問を受けるシーンは前作「ワールド・イズ・ノット・イナフ」にもあった。ハル・ベリーの活躍は「トゥモロー・ネバー・ダイ」のミシェル・ヨーのアクションには及ばない。20作目ともなると、新機軸を出すのもなかなか難しいのだろう。
北朝鮮の危険人物ムーン大佐を暗殺するため、ジェームズ・ボンド(ピアース・ブロスナン)ら3人がサーフボードで侵入する。ボンドは正体を見破られるが、鞄に仕掛けた爆弾を爆発させ、逃げたムーン大佐を追う。このホバークラフトを使ったアクションが見せる。ムーン大佐は崖下に落ちて死亡。ボンドは大佐の父親の将軍に捕まり、拷問を受ける。拷問シーンにマドンナの歌を重ねたきれいなタイトルが終わると、映画はいきなり14カ月後。ボンドはムーン大佐の補佐だったザオ(リック・ユーン)との捕虜交換で解放される。しかし、情報を漏らした疑いがかけられ、M(ジュディ・デンチ)は諜報員の資格を剥奪する。ボンドはザオのいるキューバに向かい、謎の美女ジンクス(ハル・ベリー)に出会う。ザオはアイスランドのダイヤモンド王グスタフ・グレーブス(トビー・スティーブンス)と組んでいるらしい。背後の陰謀を暴くため、ボンドはジンクスと協力して2人の身辺を調べ始める。
考えてみると、諜報員の資格剥奪というのは「消されたライセンス」なのだった。007シリーズは第10作「私を愛したスパイ」でもシリーズ総集編みたいな作りにしていたが、今回も節目の作品であることを意識したようだ。僕はジャッキー・チェンやジェット・リーのような肉体を駆使したアクションが好きだが、このシリーズのようにスペクタクルなアクションも悪くないと思う。問題は話の設定で、明確な悪役を設定しにくく、1人の諜報員の活躍が世界を救うという話にリアリティのかけらもないことが同じような印象の作品ばかりになってしまう原因なのだろう。
この映画、昨年のアカデミー賞で明暗を分けたハル・ベリーとジュディ・デンチの共演作でもある。ハル・ベリーは主演女優賞受賞後第1作で、パンフレットでもキネ旬でも「なぜボンド・ガールに」と問われて「それが私には普通のこと」と言っている。個人的には「チョコレート」のハル・ベリーの方が美しいと思ったし、好きですけど、こういう単純な娯楽映画にも出続けてほしいものだ。