2001/11/27(火)「ポワゾン」

 R-18指定(といっても大したことはない)。ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)の原作「暗闇へのワルツ」の2度目の映画化。ちなみに一度目はフランソワ・トリュフォー「暗くなるまでこの恋を」(1969年)で、ジャン=ポール・ベルモンドとカトリーヌ・ドヌーブが共演した。今回はアントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリーの激しい愛を描く。

 19世紀後半のキューバが舞台。コーヒー会社を経営するルイス・バーガス(アントニオ・バンデラス)は愛など信じない男。新聞の交際欄を通じて知り合ったアメリカ女性と一度も会わずに結婚を決める。船から下りたジュリア・ラッセル(アンジェリーナ・ジョリー)は写真とは異なる美しい女だった。「外見で判断しないよう試した」と話すジュリアだったが、ルイスも自分が会社社長であることを偽っていた。2人はすぐに結婚、ルイスは情熱的なジュリアに夢中になる。ある日、ジュリアはルイスの預金を全額引き出し、結婚指輪を置いて姿を消す。探偵を名乗るダウンズ(トーマス・ジェーン)はルイスの妻は本物のジュリアを殺し、すり替わっていたのだと話す。絶望と憎悪に駆られたルイスはダウンズとともにジュリアを捜し始める。

 ミステリなのでこれ以上は書かないが、映画は中盤でネタをばらし、その後はルイスとジュリアの愛を描いていく。ちょっとヒッチコックを意識したのかと思える構成ではある。しかし、例えばプロットが似ているヒッチコック「めまい」に比べると、どうも主演の2人に切実さが足りない。アンジェリーナ・ジョリーは個性的な美人ではあるが、だれもが認める美人とは言えないだろう。だから、2人の初対面の場面がなんだか落ち着かない。ファム・ファタール(宿命の女)を演じるには少し若いような気もする。バンデラスは悪くないけれど、愛に翻弄され、破滅への道筋をたどる男の苦悩を十分には見せてくれない。もっとこの男の心情を緻密に描く演出が必要だったように思う。凡庸なのである。

 監督のマイケル・クリストファーは劇作家、脚本家出身で、これが劇場用映画監督2作目。原題はOriginal Sin。パンフレットにはどこにもこの表記がなく、知らない人は原題をPoisonと勘違いしてしまうのではないか(ま、映画ではちゃんとタイトルがOriginal Sinと出ますが)。