2000/10/11(水)「X-メン」

 アメリカン・コミックスのヒット作を「ユージュアル・サスペクツ」(傑作)のブライアン・シンガー監督が映画化した。今からそう遠くない未来を舞台に、人類を憎悪し、滅ぼそうとするミュータント、マグニートー(イアン・マッケラン)の一味とそれを阻止しようとするエグゼヴィア教授(パトリック・スチュアート)率いるX-メンが対決する。設定もストーリーもまずまずなのだが、なんとなく盛り上がりに欠ける。主人公格のウルヴァリンを演じるヒュー・ジャックマン(若い頃のクリント・イーストウッドみたい)がやや弱いためか。

 「敵は強大、味方はわずか」というのがこの映画のコピー。でも敵だって4人しかいない。数から言えば、X-メンの方が多いんですよね。ただ、弱い。ウルヴァリンもストームもサイクロップスもジーン・グレイもクライマックスにマグニートー一人に歯が立たない。テレキネシスだ、破壊光線だといっても一人一人の力は大したことないんですね。

 ミュータントはその恐ろしい能力ゆえに社会から阻害された存在という設定だけれど、それをもう少しストーリーに絡めると良かった。ティム・バートン「バットマン リターンズ」のような深みが欲しかったところ。ブライアン・シンガーの演出は可もなく不可もなくといったレベルで、物語が発端のせいもあって、交通整理で終わった感がある。3部作となることが決まっているらしく、次はウルヴァリンの改造の秘密が中心になるのだろう。ウルヴァリンは仮面ライダー(あるいはロボコップ)のような存在で、改造人間ゆえの悲劇性がつきまとう。これを前面に押し出せば、もっとなんとかなるかもしれない。次に期待したい。

 パトリック・スチュアートは適役。ファムケ・ヤンセン、アンナ・パキン、ハル・ベリー、ついでに変幻自在のミスティーク役レベッカ・ローミン・ステイモスも含めて女優陣は良い。