2021/11/07(日)「アイダよ、何処へ?」ほか(11月第1週のレビュー)

「劇場版 きのう何食べた?」

評判が良いのでドラマ版を事前に2話まで見ました。
ゲイカップルの日常を描いていますが、特徴的なのは料理が大きな部分を占めていること。
よしながふみ原作、安達奈緒子脚色なので、おかしくて、おいしそうで、楽しいドラマになってます。
劇場版は中江和仁監督らドラマ版のスタッフ・キャストがそのまま担当しているため印象はドラマ版と変わりません。
主演の西島秀俊、内野聖陽とも慣れたもので、演技が安定しています。
30分ドラマの映画化でよくある失敗は、30分なら成立したことが2時間では成立しにくいこと。
「映画 みんな!エスパーだよ! 」とか「映画賭ケグルイ」およびその続編などの失敗はそういう理由でしょう。
この映画は失敗こそしていませんが、間延びしていると感じる部分はやはりありました。
それでも合格点の出来ですし、女性客を中心にヒットしているのも納得できるものにはなってます。

「モーリタニアン 黒塗りの記録」

米同時多発テロの首謀者の一人として、キューバのグアンタナモ米軍基地に裁判もないまま何年も拘禁された男モハメドゥ・ウルド・スラヒが弁護士と共にアメリカを訴えた実話の映画化。
弁護士をジョディ・フォスター、スラヒをタハール・ラヒム、スラヒの起訴を担当するスチュアート中佐をベネディクト・カンバーバッチが演じています。
アメリカは必ずしも正義の国ではありませんが、間違いを正し、公正さを貫き、法律を遵守する真正直な人たちがいるのは確か。
弁護側と検察側の違いはあっても、フォスターとカンバーバッチが演じるのはこうしたタイプです。
グアンタナモ基地で行われる拷問には胸が悪くなりますし、ケヴィン・マクドナルドの演出もまずまずですが、IMDb7.5、メタスコア53点、ロッテントマト75%と高くはない評価に留まっています。

「アイダよ、何処へ?」

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争末期の1995年7月に起きた「スレブレニツァの虐殺」を描いたヤスミラ・ジュバニッチ監督作品で今年のアカデミー国際長編映画賞にノミネートされました。
セルビア人勢力に追われ、スレブレニツァの2万5000人の住民(ボシュニャク人=イスラム教徒)が国連基地に集まってくる。
国連の通訳アイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は逃げてきた同胞とその中にいる夫と息子たちを守ろうと奔走する。
しかし、国連軍の兵士の数は少なく、セルビア人勢力に言われるまま、住民を他の地区に移すことに同意する。
その過程で男性を中心に住民たちは虐殺されていく。
最後に出る字幕によると、虐殺されたのは8,373人。
映画は緊迫する状況を克明に描いていきますが、虐殺の様子を描くのは1カ所だけ。
実際にはこの場面のほかに逃走途中の約1万5000人がセルビア人勢力の攻撃を受け、7000人以上が殺されたそうです。
捕虜にしなかった理由は、あまりに数が多く、収容に困ったためと言われています。
国連がセルビア人勢力に対して空爆を行わないなど何の役にも立っていないことが腹立たしくなりますが、パンフレットやWikipediaなどによると、フランス人兵士と国連軍が人間の盾になっていたことが空爆できなかった理由のようです。

「エターナルズ」

アメリカでのプロの評価はネガティブなものが多く、メタスコアは53点、ロッテントマトでは肯定的評価51%(ユーザー評価は86%と良いです)。
ある程度、ダメなことを覚悟して見ましたが、全然OKのレベル。
少し長い(2時間36分)のが玉に瑕なのを除けば、ストーリー展開に意外性があり、SF的にも何ら問題はありません。
アメリカ人にとっては広島原爆投下を人類の愚行として否定的に描いた部分や、マーベル映画として「シャン・チー テン・リングスの伝説」に続いて中国系俳優が主人公なのが気に入らない人がいるのかもしれません。
宇宙的スケールの超大作を初めて監督したクロエ・ジャオはよくコントロールしていると思います。

「ボクたちはみんな大人になれなかった」

コロナ禍の2020年から1995年まで時代を遡りながら、主人公佐藤誠(森山未來)の生き方を描いています。
主人公が関わっていく女性たち、特にSUMIREと伊藤沙莉が大変良いです。
「あたしブスだから、会ったらきっと後悔しますよ」。
会う前、手紙にそう書いてきた伊藤沙莉が主人公にとってはかけがえのない女性だったはず。
その彼女のSNSで幸福な結婚をして子供もいる現在の状況を主人公が知り、過去を回想していくきっかけになっています。
前半はどうかなと思いましたが、刺さる人には刺さる映画だろうと思いますし、SUMIREと伊藤沙莉の部分に関しては僕も賛辞を送りたいです。
原作は燃え殻(作家名)のデビュー作の自伝的ベストセラー小説。
監督はこれがデビューの森義仁(よしひろ)。
脚本は「オーバーフェンス」「まともじゃないのは君も一緒」の高田亮。
原作未読ですが、時代を遡っていく構成は高田亮の工夫なんでしょうかね。