2023/06/18(日)「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」ほか(6月第3週のレビュー)

 「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は予想以上の傑作。アニメの技術の斬新さ以上にエモーションをグッラグラに揺さぶりまくる胸熱の青春映画でした。

 序盤、父親と不仲のグウェンのエピソードでグッと来て、続く主人公モラリスのエピソードがイマイチかなと思えましたが、その後は文句を言えない充実した仕上がり。愛する人を救うか、世界を破滅から救うかの二択に関して、他の世界のスパイダーマンたちは愛する人を仕方なく犠牲にしてきましたが、モラリスは両方を救おうとします。

 これに加えてモラリス自身の特異な問題があり、いったいどうする、というところで、なんとなんと「つづく」の文字(吹き替え版で見ました)。いや、前後編2部作であることは知ってたんですが。続編の「ビヨンド・ザ・スパイダーバース」はアメリカでは2024年3月公開予定になってます(日本は時期未定)。

 見終わった後、前作「スパイダーマン:スパイダーバース」(2018年)を配信で再見しました。前作も公開時には斬新と思いましたが、今作と比べると、技術的にはオーソドックスとさえ思える内容でした。5年間の技術の進歩はそれだけのものがあるわけです。

 今作は前作見ていなくても十分に楽しめる話ではありますが、思わぬ感動をもたらし、意気が上がるラストショットは前作見ていないと分からないと思います。Netflix以外の各配信サイトで配信されていますのでどうぞ。前作のエンドクレジットの後には今回の主要キャラであるミゲル・オハラが出てきます。

 小難しい話にせず、感動的にまとめた脚本が成功の大きな要因だと思います。脚本にクレジットされているのは3人で、前作からの担当はフィル・ロードのみ。クリストファー・ミラーとデヴィッド・キャラハムが新たに参加しています。監督はホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソンの3人。2時間20分。
IMDb9.0、メタスコア86点、ロッテントマト96%。
▼観客30人ぐらい(公開初日の午前)

「ザ・フラッシュ」

 マーベルの影響なのか、これもマルチバースもの。自分の母親を死なせないためにフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)が過去に戻って、ある出来事を変えてしまいます。現在に戻ったら、それは元いた世界とは別の世界で、母親は生きているものの、もう一人の自分がいて、しかもこの世界ではスーパーマンが撃退したはずのゾッド将軍(マイケル・シャノン)が地球を破滅させようとしていました。バリーはこれをくいとめようと、奔走することに…。

 ほとんどマッチポンプみたいな話にあきれますが、バットマン(ベン・アフレック)とワンダーウーマン(ガル・ガドット)まで出てくる序盤は「ジャスティス・リーグ」(2017年)の乗りで悪くありません。しかし、その後は展開がモタモタした印象。「アクロス・ザ・スパイダーバース」とは違って長く感じました。

 スーパーガール役のサッシャ・カジェはトホホな出来だった「スーパーガール」(1984年、ジャノー・シュワーク監督、ヘレン・スレイター主演)のリメイクが「モータル・コンバット」(2021年)のオーレン・ウジエル監督で予定されていて、その顔見せみたいなものなのでしょう。

 監督は「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」(2017年)のアンディ・ムスキエティ。2時間15分。
IMDB7.4、メタスコア56点、ロッテントマト67点。
▼観客5人(公開2日目の午前)

「波紋」

 荻上直子監督がオリジナル脚本で描く中年主婦の物語。東日本大震災後に出て行った夫(光石研)が10年ぶりに帰ってくる。夫はガンにかかっていて、その治療費を目的に帰ってきたらしい。妻(筒井真理子)は新興宗教にのめり込んでいた。

 クスクス笑いながら見ましたが、焦点が絞り切れていない印象。2時間。
▼観客10人(公開5日目の午後)

「M3GAN ミーガン」

 ミーガンと呼ばれるAIロボットが両親を事故で亡くした少女を保護する命令を過剰に守って、少女にとっての脅威を排除する殺人ロボットになるSFサスペンス。オリジナルなアイデアがあまりないにもかかわらず面白いです。あのクネクネした踊りはなんだか気味が悪くて強烈。

 ミーガンは暴走するわけではなく、職務を忠実に守っているだけ。そういう意味ではHAL 9000(「2001年宇宙の旅」)などと同様です。M3GANはModel 3 Generative ANdroid(第3型生体アンドロイド)の略称。ジェラルド・ジョンストン監督、1時間42分。

IMDb6.4、メタスコア72点、ロッテントマト93%。
▼観客20人ぐらい(公開4日目の午後)

「リトル・マーメイド」

 オリジナルのアニメ版(1989年)には何の思い入れもありません。「美女と野獣」(1991年)で開花したアラン・メンケンの音楽の助走的な作品と思います。実写版は賛否ありますが、僕はアニメ版よりよく出来ていると思いました。ただ、クライマックスに追加されたスペクタクルなシーンは不要でしょう。

 ロブ・マーシャル監督、2時間15分。
IMDb7.2、メタスコア59点、ロッテントマト67%。
▼観客多数(公開6日目の午前)