2024/03/17(日)「デューン 砂の惑星 PART2」ほか(3月第3週のレビュー)
「デューン 砂の惑星 PART2」
3年ぶりの続編。前作はVFXが素晴らしかったですが、話はそんなに進まず、ハルコンネン家に襲われて父親を殺された主人公ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)と母レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)がデューンと呼ばれる辺境の惑星アラキスに逃げてきたところで終わりました。続編では砂漠の民フレメンの救世主として台頭し、ハルコンネン家に復讐するポールの姿が描かれます。巨大なサンドワーム(砂虫)をはじめ、今回もVFXが高いレベルを達成していて、来年のアカデミー賞で視覚効果賞ノミネートは確実。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい正攻法の重厚なタッチで2時間46分の長尺を飽きさせません。できるだけ音響の良い大きなスクリーンで見た方が良い映画になっています。前作の振り返りはないので、アラキスだけに存在し、争奪戦となっている香料(メランジ)の意味などこの映画だけでは分からない部分もあり、前作は見ておいた方が良いです。
今回のメインの敵はクライマックスでポールと対決するハルコンネン家のフェイド=ラウサで、異常性と残虐性を備えたラウサを「エルヴィス」(2022年、バズ・ラーマン監督)のオースティン・バトラーが不気味に演じています(この役、デヴィッド・リンチ版ではスティングが演じました)。
フランク・ハーバート原作の完璧な映像化、といいたいところですが、惜しむらくはエモーショナルな高まりが不足気味です。ポールは何を考えているのか分からないところがあり、感情を表に出すこともまれです(これはヴィルヌーヴの他の作品にも言えることです)。エモーショナルな部分を引き受けているのはポールと愛し合うことになるフレメンのチャニ(ゼンデイヤ)で、可哀想な立場に置かれたクライマックスのチャニの姿は悲しいです。
当然のことながら、まだまだ話は終わらず、第3作も作ってもらわないと困ります。ヴィルヌーヴは第3作の脚本を執筆中だそうですが、製作が決定したわけではありません。この映画のヒットにかかっています。
IMDb8.9、メタスコア79点、ロッテントマト92%。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)2時間46分。
「DOGMAN ドッグマン」
リュック・ベッソン監督が実話をヒントに作ったアクション。といっても、実話をヒントにしたのは主人公が犬の檻の中で育ったという部分だけ。一つではなくフランス、アメリカ、ルーマニアでの事例を参考にしたそうです。アニメの「狼少年ケン」(1963年)をはじめ、犬や狼に育てられた人間という設定の物語はたくさんありますが、ベッソンが作ると、当然のようにノワールなアクションになりますね。警察の検問で止められたトラックに多数の犬がいて、運転席にはけがをした女装の男がいた。男は警察で精神科医のデッカー(ジョージョー・T・ギッブス)にこれまでの半生を話す、という形で主人公ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の物語が描かれます。
ダグラスは犬の檻で父親から撃たれ、下半身不随となり、車椅子で生活しています。養護施設で憧れた女性への恋はかなわず、ドラアグクイーンとなり、犬を使った盗みがギャングに知られて襲われることになります。傑作「ニキータ」(1990年)や「レオン」(1994年)のレベルには達していませんが、クセのある主人公の設定などベッソンらしいアクションだと思います。
IMDb6.7、メタスコア40点、ロッテントマト61%。
▼観客7人(公開5日目の午後)1時間54分。
「あの夏のルカ」
コロナ禍のため配信スルーだったピクサーの3作品(「私ときどきレッサーパンダ」「あの夏のルカ」「ソウルフル・ワールド」)が劇場公開されることになりましたが、これだけ見ていませんでした。「ローマの休日」風のポスターがあり、スクーターのヴェスパが登場するので恐らく1950年代が舞台。北イタリアの地中海沿岸の町で、海に住むシー・モンスターの少年ルカの冒険と成長を描いています。ルカは掟を破って陸に上がり、同じくシー・モンスターのアルベルトとともに正体を隠しながら人間の世界を冒険する、というストーリー。シー・モンスターは陸に上がって体が乾くと、人間の姿になりますが、濡れると元に戻るという設定です。見ているうちに、見覚えのあるシーンがたくさん。見ていなかったというのは勘違いで、見たことを記録していなかっただけのようです。というか、ボーっと見てたんでしょうね。人種差別の比喩も盛り込みつつ、しっかりと作られた少年少女向けの3DCGアニメでした。
日本版のエンドクレジットで2曲目に流れるのは井上陽水の名曲「夏休み」。ヨルシカのボーカルsuisが歌ってます。監督は短編「月と少年」(2011年)のエンリコ・カサローザ。1時間36分。
IMDb7.4、メタスコア71点、ロッテントマト91%。
「映画 マイホームヒーロー」
原作コミック(山川直輝原作、朝基まさし作画)のテレビドラマ版の7年後を描く劇場版。この原作は一昨年、アニメにもなりましたが、死体を溶かし、解体するなど陰惨な印象が強くて3話ぐらいで見るのをやめました。ドラマが見続けられたのは主人公を演じる佐々木蔵之介が明るいキャラだからでしょう。ドラマ版は娘の零花(齋藤飛鳥)に暴力を振るい、さらに殺そうとしていた半グレの麻取延人(内藤秀一郎)を主人公の鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が殺してしまったことから半グレ組織に狙われるというストーリーでした。ラストで延人の父親義辰(吉田栄作)は自殺して罪を哲雄に着せようとしますが、哲雄は義辰の死体を山中に埋め、逃げおおせました。
ところが、その死体を埋めた場所で土砂崩れが発生し、死体が発見されてしまうというのが映画の発端。義辰となくなった10億円の行方を捜していた半グレ組織から再び哲雄が狙われることになります。今回初めて出てきた10億円の話など脚本に穴が多いのが残念ですが、刑事になった零花を演じる齋藤飛鳥はサンドバッグへのパンチや蹴りでキレのある動きを見せて感心しました。できれば、本格的な格闘シーンも欲しかったところ。人気アイドルなので、けがの恐れのあるシーンは無理なのでしょうね。
▼観客12人(公開7日目の午後)1時間57分。
「ダムゼル 運命を拓きし者」
「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のミリー・ボビー・ブラウンが主演したNetflixオリジナル作品。主人公エロディはハンサムな王子と結婚することになるが、その結婚は王族が過去に交わしたドラゴンとの契約を守るため彼女をいけにえにするものだった。ドラゴンのいる洞窟に投げ込まれたエロディは必死に脱出を図る。ダムゼルは乙女の意味。テレビスケールの話ですが、ブラウンは頑張っていて、以前よりきれいになった印象も。共演はアンジェラ・バセット、レイ・ウインストーン、ロビン・ライトなど。監督は「28週後…」などのファン・カルロス・フレナディージョ。1時間50分。
IMDb6.2、メタスコア46点、ロッテントマト58%。