2005/04/16(土)「オアシス」

 キネ旬ベストテン4位。東京では昨年2月に公開された。軽度の知的障害のある男ジョンドゥ(ソル・ギョング)と脳性マヒで体が不自由なコンジュ(ムン・ソリ)のラブストーリー。まず、ムン・ソリのリアルな演技に驚き、こうした2人を主人公にして映画を成立させてしまうイ・チャンドン監督の力量に驚く。2人はそれぞれ周囲から理解されていない。だからこそお互いがお互いを切実に必要としている。それが周囲にまったく通じない。いや障害を持つ2人は自分たちの真実を周囲に伝える術を持たないのだ。圧倒的に孤立した絶望的状況の中で、映画は悲劇的展開に走りそうになるけれど、そうはならず、2人の純粋さを強烈に浮かび上がらせる。希望を持たせるラストが素晴らしい。

 一方で、ぎりぎりのところで成立している映画だとも思う。ムン・ソリの演技は一歩間違えれば、障害者差別と受け取られる恐れもある。脳性マヒの患者はこういう姿形をしていると表現すること自体が差別を含むものだからだ。物まねと演技は紙一重なのだ。そうならなかったのはイ・チャンドンの確かな視点と真摯な演出があるからだろう。安易な泣かせにすることなど、イ・チャンドンの頭には最初からなかったに違いない。