2005/04/17(日)「コンスタンティン」
肺ガンのくせにヘビースモーカー。若い頃、自殺を図ったために天国への門は閉ざされている。虚無的で偽悪的な主人公のジョン・コンスタンティンのキャラクターは魅力的だ。コンスタンティンは(映画では)死んで地獄に行きたくないために人間界に侵略してくる悪魔たちを追い返している。幼い頃から悪魔が見える能力を持っていたために長じてエクソシストになり、悪魔退治屋になった。それとて、正義のためではなく自分のためというのがいい。そのコンスタンティンをキアヌ・リーブスが颯爽と演じる。血を吐きながら、たばこを吸い、機関銃に似た武器で悪魔と戦う。DCコミックスの人気キャラクターを、ミュージックビデオ出身で監督デビューのフランシス・ローレンスはスタイリッシュにビジュアルに映像化している。まるで核戦争後のような地獄のビジュアルなど映像面では水準を保っているのだが、惜しいことにキャラクターに血肉が通っていない。だから物語にはそれなりのひねりがあるのに、エモーションが高まっていかない。ビジュアルがビジュアルにとどまっているのはそのためだろう。ニヒルな主人公を突き動かすエモーションをもっと描く必要があったと思う。ミュージックビデオ出身の監督が陥りやすい欠陥にすっぽりはまっている。
冒頭、メキシコでキリストを殺した“運命の槍”が地中から掘り出され、見つけた男が憑かれたように歩き始める。車がぶつかっても男は傷ひとつ負わない。槍を持った男が通ると、周囲にいた牛たちがバタバタ倒れていく。変わって、主人公コンスタンティンが少女に取り憑いた悪魔を払う場面。自分の手には負えないとヘネシー神父(ブルイット・テイラー・ビンス)がコンスタンティンに悪魔払いを依頼したのだ。その悪魔払いの中でコンスタンティンは今までとは違う何かを感じる。神と悪魔は中立を保っているはずなのに、悪魔が少女の体を借りて人間界に進出しようとしていた。女性刑事アンジェラ(レイチェル・ワイズ)は妹の自殺の謎に迫るため、偶然会ったコンスタンティンに協力を求める。いったんは断ったコンスタンティンだが、アンジェラの背後に悪魔がつきまとっているのを知り、妹の死の真相を探り始める。
映画は大天使ガブリエル(ティルダ・スウィントン)、サタンの死者バルサザール(ギャビン・ロズデイル)、神と悪魔の間で中立を保つミッドナイト(ジャイモン・フンスー)、天使でも悪魔でもないハーフ・ブリードたちを巻き込んで進行する。それぞれにいい役者をそろえ、物語も悪くないのに、どうも深みに欠けるのはやはり演出に力が足りないためか。破綻のない映画には仕上がったが、一通りそろえれば、映画は面白くなるわけでもないらしい。「ブレイド」と「マトリックス」を合わせたような展開で、全般的に目新しさに欠けるのも一因だが、何よりも破綻を恐れて小さな完成度にとどまった印象がある。まとめることだけに力を注いだ感じなのである。
アンジェラと妹の2役を演じるレイチェル・ワイズは色っぽくてよろしい。クライマックスに登場するピーター・ストーメアは飄々としながら一筋縄ではいかない雰囲気を漂わせるサタンを好演していると思う。