2002/07/07(日)「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」
かったるい前半、つまりアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)とパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)のありきたりでまるでロマンを欠く恋愛描写に目をつぶれば、これは「スター・ウォーズ」シリーズとしては3作ぶりに面白い。あまりにも子ども向けの「ジェダイの復讐」にがっかりし、「エピソード1 ファントム・メナス」も燃えさせてはくれなかったが、この映画、後半のたたみかけるような描写がとても充実している。豊富なSFXとともにキャラクターが屹立してきて、見終わってみたら、かなり満足できる出来栄えだった。シリーズとしては「帝国の逆襲」以来22年ぶりの成功作と言える。
実際、「帝国の逆襲」とよく似た構成である。アナキンとパドメの愛はハン・ソロとレイア姫のそれを思わせるし(しかしながら、"I Love You" "I Kmow"という悲劇とロマンあふれる決定的な名台詞がないのがダメ)、これとオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)が単身、遠い星で悪の陰謀を目にする場面が交互に描かれるあたり、「帝国…」を参考にしたのではないかと思えるほど。小惑星帯の戦闘シーンまである。C-3POはようやく満足な体になり(と思ったら、「帝国…」でバラバラにされたような運命が待っている)、賞金稼ぎのボーバ・フェットが姿を見せ、ルークの叔父と叔母も、砂の惑星タトゥイーンのタスケン・レイダーやジャワ人も出てくる。おまけにデス・スターの設計図まで。こういうシリーズにかかわったものが出てくると、なんだか懐かしさがこみ上げてくる。
思えば、「エピソード1」があまり面白くなかったのはシリーズにその後も関わるのがまだ9歳のアナキンとケノービ、ロボットだけだったからなのだろう。あれは「スター・ウォーズ」という名前はついていても、これまでのシリーズとはまったく異質の感触だった。前作でけたたましさにうんざりしたジャー・ジャー・ビンクスを控えめな扱いにしたのも正解。今回、子ども向けをあまり意識していないのがうれしい。ルーカスはようやく我に返ったらしい。
後半はまさに戦争(ウォーズ)と思えるドロイドとクローン軍団の戦いが目を引くが、同時に前作では顔見せ程度だったメイス・ウィンドウ(サミュエル・L・ジャクソン)が活躍し、それ以上にシリーズで初めてヨーダが力を見せつけるあたりが楽しい。ヨーダはフォースだけでなく、ライトセイバーの達人でもあるのだった(これはフルCGだから描写できたのだろう)。敵方のドゥーク伯爵を演じるクリストファー・リーの貫禄あるセリフ回しも立派。強力な敵がいると、やはり面白くなる。
「スター・ウォーズ」が復活したとの印象が強く、完結編が公開される3年後が待ち遠しくなる快作。ラストに描かれるクローン・トルーパーズ(その後のストーム・トルーパーズか)の大軍団と巨大戦艦スターデストロイヤーの雄姿には感慨深いものがある。「ああ、銀河共和国はついにやってしまった」という取り返しのつかない失敗を象徴的に描いたこの場面は秀逸だ。このデストロイヤーがレイアの乗った宇宙船を追いかける「エピソード4 新たなる希望」の冒頭のシーンからSF映画の歴史は変わったのだ。
フォースのダークサイド、悪の秘かで着実な台頭を描く「エピソード2」は気分的にはハッピーではないのだが、シリーズ全体との整合性は取れており、ドラマティックな感じがすこぶる良い。たぶん、ジェダイがメタメタにやられるであろう次作「エピソード3」をルーカスはどうやって映画化するのだろう。
それにしてもアナキンとパドメの愛の描写はもう少し何とかならなかったのか。これだけがかえすがえすも残念である。