2011/05/18(水)「9 ~9番目の奇妙な人形~」
3DCGアニメ。冒険活劇に徹しているのが素晴らしい。9と呼ばれる人形が目を覚ますと、そこは機械と人間の戦いが終わった未来。人間はすでに滅んでいた。9はふとしたことで邪悪なマシンを目覚めさせてしまう。復活したマシンは9の仲間の人形たちを次々に餌食にしていく。9はマシンとの戦いに挑む。
設定はファンタジーだが、中身はアクション。奇妙な人形たちは襲ってくる猫や翼手竜のような機械たちと戦う。戦いにスピード感があって良いが、設定の細部が今ひとつ分かりにくいのが惜しい。たとえば、人形たちはどうやって動いているのかとか、邪悪なマシンはなぜ人形たちの生気を吸うのかといった理由が説明されない。
シェーン・アッカーが自作短編アニメ(2005年アカデミー賞ノミネート)をティム・バートンの後押しを受けて長編化したもの。元の短編も見てみたいものだ。と思ったら、YouTubeにあった。なるほど、こちらは9と猫型マシンとの対決をメインに描いている。キャラクターの造形は長編版と同じ。9のキャラクターを他のキャラクターに分散して、物語の背景を拡充したのが長編版ということになる。短編は物語のワンシーンを描き、長編は全体像を描いているわけだ。IMDBの採点は短編が7.7、長編は7.0。
2011/05/16(月)「パリより愛をこめて」
ノンストップのアクション。ただし、この話、1時間を過ぎたあたりの展開を序盤に持って来た方が良かった。初めの方の展開はノンストップではあっても謎が物足りないのだ。情緒を描く暇もない。昨年、サイモン・カーニック「ノンストップ!」という小説が面白かったけれど、あれを見習って欲しい。ただ、アクションに関しては十分、水準は行っている。トラボルタは敵を殺しすぎだけど。監督は「96時間」のピエール・モレル。主演はジョナサン・リース=マイヤーズ。
2011/05/16(月)「トゥルー・グリット」
チャールズ・ポーティスの原作を半分ぐらいまで読んだところで見た。冒頭のナレーションは原作の書き出しと同じ。それにかぶせてマッティ・ロスの父親の死体と逃亡する馬を見せるのがうまい省略の仕方だ。冬の西部の風景が美しく、コーエン兄弟は的確な画面設計と描写でストーリーを語っていく。画面に格調の高さがあり、正統派の西部劇といった感じに仕上がっている。今年のアカデミー賞では無冠に終わったが、せめて撮影賞は人工的な「インセプション」ではなく、この映画の方が良かったと思う。
飲んだくれの連邦保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジスはセリフ回しなど、ちょっと作りすぎかなと思えるが、まず好演と言って良いだろう。ちなみに原作でアイパッチをしているのは左目だが、映画では右目になっている。主演のヘイリー・スタインフェルドはこれが映画デビューとは思えない。芯の強い少女をしっかりと演じている。トゥルー・グリット(本当の勇気)はこの少女を指しているのだろう。
ところで、主人公の父親が買った馬は原作ではポニーとなっているし、映画のセリフでもポニーと言っているが、字幕はマスタング。画面に出てきたのも普通の馬に見えた。僕はマスタングについては野生馬という訳しか知らなかったが、調べたら小型の野生馬のことだった。小型の馬だからポニーと言っていたのか?
2011/05/11(水)「グリーン・ゾーン」
イラクに大量破壊兵器(WMD)がなかったのは既定の事実なのだから、今さら、それがアメリカ政府上層部のでっち上げだったなんてことを力をこめて言っても、あまり意味はない。マイケル・ムーアの言うようにこれはフィクションとして作るべき題材ではなかったと思う。事実を積み上げた映画であれば、もっと評価は高かっただろう。
それよりもこの映画を「反米的」などと罵倒する評論家がいることに驚く。そういうバカがいる国でこういう映画を撮ったことには意義があるのかもしれない。監督が「ユナイテッド93」のポール・グリーングラスなのでサスペンスやアクションは水準を行っている。「この国をお前たちのいいようにはさせない」というイラク人の主張をもっと前面に出した方が良かっただろう。
2011/05/11(水)「ザ・ウォーカー」
バカにして見始めたら、面白かった。文明崩壊後の世界を舞台にしたアクション。序盤、デンゼル・ワシントンが大きな山刀で数人の敵を一瞬にして倒す場面でおおお、と思う。ワシントンは西を目指して30年間歩いている。1冊の本を届けるためだ。そういう貴重な本ということであれば、容易に想像がつくが、映画はモノクロームに近い単色系の色あせた画面で説得力のあるストーリーを展開する。ゲイリー・オールドマンが支配する街でのアクションを見ると、基本は西部劇だなと思う。オールドマンもその本を求めていて、ワシントンとの争いが始まることになる。
ちょっと引っかかったのは東海岸から西海岸までいくら歩いてであっても30年もはかからないだろう、ということぐらいか。「マッドマックス2」のような世界を舞台にした佳作。監督はアルバート&アレン・ヒューズ兄弟。クレジットはThe Hughes brothersと出た。
見ていて思ったのは本は強いなということ。電気のない世界では電子ブックなんて役に立たない。本は電気がなくても読むことが出来るし、紙が傷まない限りは数百年でも保存できる。iPadの発売以降、電子出版が注目を集めているけれど、本当の本好きは本から離れることはないだろう。ま、出張などで持って行くと、何冊でも入れられる電子ブックは便利ではありますけどね。