2013/03/31(日)「ひまわりと子犬の7日間」
実際に犬の殺処分の様子を見たことがあるが、炭酸ガスで殺される犬たちは容易にアウシュビッツを思い起こさせる。宮崎県内だけで年間4000頭の犬がそういう殺し方で処分されているのに、その中の一家族の母犬と子犬だけを助けることに何の意味があるのか。映画はそこにまったく触れていかない。問題意識の低さと甘さが露呈している。
堺雅人の涙を見て、元の飼い主の涙を思い出すという犬の擬人化にも大いに疑問がある。新人監督がまじめに一生懸命に撮った映画だが、この程度の出来を褒めることは褒め殺しにつながりかねない。原作がどうあれ、脚本を徹底的に練り上げるべきだっただろう。話の膨らませ方が足りないのだ。1時間のテレビドラマですむような内容を映画にすることはない。平松恵美子監督、くれぐれも注意して2作目に取り組んでほしいと思う。
2013/03/26(火)「砂漠でサーモン・フィッシング」
イエメンの大富豪シャイフ・ムハンマド(アマール・ワケド)が主人公で水産学者のアルフレッド・ジョーンズ(ユアン・マクレガー)に言う。
「友よ、残念だったな」
「いいえ、奇跡です」
「ああ。しかし、残念だ」
アルフレッドがイエメンで鮭を放流するプロジェクトを通じて知り合い、次第に思いを寄せるようになったハリエット・チェトウド=タルボット(エミリー・ブラント)。ハリエットの恋人ロバート・マイヤーズ(トム・マイソン)は砂漠の戦場でMIA(戦闘中行方不明)になっていたが、奇跡的に生きていたことが分かったのだ。首相広報担当官のパトリシア・マクスウェル(クリスティン・スコット・トーマス)はプロジェクトのPRを目的にロバートをイエメンに連れて行き、ハリエットと再会させる。しっかりと抱き合う2人を見て、シャイフが言うのが上のセリフだ。アルフレッドはその前日に「僕たちの間に実現可能性はあるかな」と思いを打ち明けたばかりだった。
ポール・トーデイの原作「イエメンで鮭釣りを」を「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイが脚本化、ラッセ・ハルストレムが監督した。ウィットに富んだセリフをちりばめ、ハッピーエンドを希求するビューフォイの脚本がまず、うまい。ハルストレムの演出も手堅いので、佳作に仕上がっている。
エミリー・ブラントは憂いを含んだ表情が良く、ユアン・マクレガーはいつものように少しコミカルな水産学者を演じている。この2人とアマール・ワケドの好感度の高さが映画の好感度にもつながっている。
2013/03/17(日)「バトルシップ」
宇宙からの物体がハワイ沖に落下するまで30分余り。DVD OR ブルーレイで見る場合はここまで早送りにして何らかまわない。そこからは戦闘シーンのみ。VFXはまずまずなので、見ていて退屈はしない。しかし、話にオリジナリティーが乏しいのは減点対象だ。1時間半ぐらいで描ける内容。
2013/03/03(日)「ふがいない僕は空を見た」
「恋の罪」がR18+なのはよく分かるが、これのどこがR18+なのだろう。これでR18+の判定になるのなら、描写を少しソフトにして高校生でも見られる映画にした方が良かったような気がする。昨年は「ヒミズ」「桐島、部活やめるってよ」と青春映画の傑作があったが、この映画もそれに連なる、そして少しも劣らない厳しい傑作だと思う。キネマ旬報ベストテン7位。
問題は何も解決しない。しかし、登場人物達は受けたダメージから、厳しすぎる現状から、なんとか立ち上がろうとする。スキャンダルに巻き込まれ、不登校だった主人公は学校に行くようになり、その親友は大学を目指して図書館で辞書をめくる。
「俺にはとんでもない部分があるから、とんでもなく人に優しくしなくちゃいけないんだ」。
「バカな恋愛したことないやつなんて、この世にいるんすかねえ」というセリフを吐くみっちゃん先生(梶原阿貴)のがらっパチなたくましさが良く、主人公の母親で助産師の原田美枝子の包容力がいい。