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2022年04月10日の記事

2022/04/10(日)「グレート・インディアン・キッチン」ほか(4月第2週のレビュー)

「グレート・インディアン・キッチン」は由緒ある家に嫁いだ妻が家事労働の奴隷のような境遇に置かれるインド映画。パンフレットによると、コロナ禍だったため本国の映画館での上映はかなわず、テレビ放映か配信を目指したものの、センシティブな宗教問題に触れたシーンが過激だったことから、テレビ局と大手配信会社は拒絶、マイナーな会社で配信されたそうです。

この映画で描かれることが特殊なものであれば、問題視されるはずはなく、ということはインドでは女性が人間扱いされない境遇か、ここまでひどくなくても同じような状況の女性が少なくないということなのでしょう。大きな反響があったため、いったんは配信を断ったamazonプライム・ビデオでも配信され、多くの観客の目に触れることができたとのこと。

物語の舞台はケーララ州北部のカリカットの町。お見合いで結婚した夫(スラージ・ヴェニャーラムード)は由緒ある家柄の出で、両親と伝統的な邸宅に暮らしている。中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ妻(ニミシャ・サジャヤン)はその家に入るが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を抱くようになる、というストーリー。

インド映画としては短い1時間40分の常識的な上映時間ですが、密度は濃く、ドキュメントタッチで映画は進みます。結婚当初は優しそうに見えた夫がだんだん男尊女卑の言動を顕わにしてくることに見ていて腹が立ってきます。妻は暴力こそ振るわれませんが、家事に追われ、勤めに出る事も許されず、生理の時には穢れた者として部屋に閉じ込められ、自由のない、息が詰まるような状況に置かれます。夫と義父は食べものを食い散らかし、家事には一切手を出しません。

夫の家はヒンドゥー教徒で、生理を忌み嫌うのはそのためだそうです。そうした映画の背景を説明したパンフレットはとても有用でした。監督のジヨー・ベービはヒンドゥー教徒の妻が第一子を妊娠した際、台所仕事をすべて受け持つことになり、その大変さを身にしみて感じたことが映画を作るきっかけになったそうです。タイトルの「グレート」は大きな皮肉なのでしょう。

IMDb8.3、ロッテントマト100%(ユーザーは85%)の高評価。ただし、アメリカでは公開規模が小さかったらしく、IMDbの投票は8000人、ロッテントマトのレビューも6人にとどまっています。

「Ribbon」

女優の、のんが脚本・監督した作品。大学が休学状態になったコロナ禍の美大生の日常を描いています。先週公開された「アクターズ・ショート・フィルム2」と同じく脚本の出来がイマイチ。面白い脚本を書けるまでは映画化を待つか、プロの協力を得た方が良いとつくづく思います。黒澤明や山田洋次のような巨匠でさえ、脚本を共同作業で書いていたわけですから、新人だったらなおさらです。

「カムカムエヴリバディ」のきぬちゃんこと小野花梨が、のんの妹役で出てくる場面は、溌剌として良い感じでした。

「ガンパウダー・ミルクシェイク」

凄腕の女殺し屋を主人公にしたアクション。主人公のサムを演じるカレン・ギランは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「ジュマンジ ネクスト・レベル」でおなじみですが、大柄であることを今回初めて知りました。この体格、アクションに向いてますし、格闘シーンの体のキレも大したものだと思います。

監督のナヴォット・パプシャドはイスラエル出身。古今東西のアクション映画を見てきた映画オタクだそうで、アクション映画のツボを心得た作りになっています。逆に言えば、いつかどこかで見たような場面が多いのが少し気になりました。特にクエンティン・タランティーノの影響が顕著で、新鮮味に欠けるきらいがありますね。アメリカでの低評価(IMDb6.0、メタスコア47点、ロッテントマト59%)はそのあたりが影響しているのでしょう。

「モービウス」

スパイダーマン・ユニバースの1本。治療法のない血液の病気で余命わずかの天才医師マイケル・モービウス(ジャレッド・レト)が吸血コウモリのDNAを使った血清を開発、自分に試したところ、病気が治っただけでなく、超人的な力を得る。しかし、血への渇望が沸き起こり、吸血鬼のような存在になってしまう。同じ病気の親友マイロ(マット・スミス)はモービウスの研究室に侵入して血清を打ち、次々に人間を襲い始める、という話。

アメリカでの酷評(IMDb5.2、メタスコア35点、ロッテントマト17%)を目にしていたので期待値ゼロで見たら、そんなにひどい出来ではありませんでした。少なくとも、これまた出来が良くなかった「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」と同レベルにはなっています。ただし、「ヴェノム」にあったユーモアはカケラもなく、暗く陰鬱な吸血鬼の話にしか見えないのが難点でしょう。

本編終了後のおまけの場面で「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」と同じく、マルチバースからあるヴィランがやって来ます。トム・ホランド版スパイダーマンに登場したヴィランで、ということは、この映画はトム・ホランド版とは別の世界に属するということなのでしょうかね。