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2022年04月17日の記事

2022/04/17(日)「愛なのに」ほか(4月第3週のレビュ)

「愛なのに」は今泉力哉が脚本を書き、城定秀夫が監督した作品。L/R15という企画名通り、R15+指定の作品になっています。脚本のクレジットは両者の連名ですが、映像化する際に付け加えたり、アレンジしたりした部分があるからでしょう。

古本屋を営む多田浩司(瀬戸康史)に対して、店の本を万引きした高校生の矢野岬(河合優実)が「多田さん、好きです。私と結婚してください」と唐突に言う序盤からおかしくて、
「私、もう16過ぎてますから結婚できます」
「うーんとね、僕は30歳でね、もうすぐ31歳になるんですよ」
「はい。結婚できますね、全然」
とやり取りが続いて完全に引き込まれました。

河合優実は昨年の「サマーフィルムにのって」「由宇子の天秤」の演技が評価されてキネマ旬報ベストテンの新人女優賞を受賞しましたが、この映画での真っすぐな演技が一番良く、魅力的です。

多田は自分には好きな人がいるからと言って断りますが、多田が告白してその女性にふられたことを知った岬は何度も求婚を繰り返します。多田をふった女、佐伯一花(さとうほなみ)は若田亮介(中島歩)と婚約し、結婚の準備を進めていますが、若田は結婚式場のウエディングプランナーである熊本美樹(向里祐香)と浮気しているというシチュエーション。濡れ場も多い大人向けのラブコメという仕上がりで、脚本も演出も演技もかなりよく出来た作品だと思いました。

詳細は省きますが、美樹が亮介に「下手ですよね、群を抜いて」と下手を繰り返し言う場面は爆笑でした。美樹の役柄は昨年の城定監督作品で、他人のものが欲しくなるヒロインを描いた「欲しがり奈々ちゃん ひとくち、ちょうだい」のキャラを引きずっているのもかしれません。

この映画、海外でも受けるんじゃないでしょうかね。特にイタリアあたりで公開すると、多くの観客の支持を得られるのではないかと思いました。

「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」

全5部作のシリーズ3作目。魔法界の支配権を握ろうとする黒い魔法使いグリンデルバルト(マッツ・ミケルセン)の計画を知ったダンブルドア(ジュード・ロウ)が魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)らとグリンデルバルトに立ち向かう、というストーリー。

ジョニー・デップがDV絡みの名誉毀損訴訟でゴタゴタしているためグリンデルバルト役はミケルセンに変更となりましたが、大きな障害にはなっていません。というか、映画そのものがあまり面白くないので、降板してもどちらでも良かった感じ。

「ハリポタ」シリーズと違って、このシリーズ、子役はいませんが、内容的には(ダンブルドアがゲイを告白しても)お子様向けの感じが抜け切れず、2時間23分もあるのに話の密度は薄いです。この程度の話なら2時間以内に収めたかったところで、VFXを楽しむことがメインの映画にしかなっていません。

「とんび」

重松清の原作を瀬々敬久監督が映画化。過去にNHKが前後編で、TBSが日曜劇場枠の全10話でドラマ化しています。今回は昭和の広島を舞台に、阿部寛と北村匠海が親子を演じます。個々の場面には悪くないものもありましたが、まとめ方がうまくいってない印象。

物語は息子の視点で語られますが、母親の事故死の場面が明確に描かれているのに息子はその真相を知らないというのは回想形式として整合性が取れません。終盤、7歳年上の子供のいる女性(杏)との結婚に父親が反対するというのも、昭和の頑固な親父ならこんなこともあったのかもしれませんが、今の映画の描写としてはどうかなと思いました。こういう人情話、山田洋次監督ならもっとうまく作るんじゃないでしょうか。

「ゴッドファーザー最終章 マイケル・コルレオーネの最期」

午前十時の映画祭で上映した「ゴッドファーザー PART III」(1990年)の再編集版。1作目、2作目が非常に優れた作品だったのに対してこの3作目は普通の出来、この原因はロバート・デュバルが出ていないからだ、と公開当時に思いました。

ソフィア・コッポラの演技は酷評されましたが、そこまでひどいとは思いませんでしたし、今回見直しても悪くないと思いました。当初予定されていたウィノナ・ライダーと比較すると分が悪いのは当然ですが、映画の出来を左右するほどひどい演技でも大きな役柄でもありません。

話自体に新味がない、面白くないのが傑作にはならなかった要因になっていて、ソフィアのほか、音楽を父親のカーマイン・コッポラにまかせたことも(ニーノ・ロータが死去していたから仕方ありませんが)家族の起用を優先したかのような悪い印象を与えたのかもしれません。

再編集版は2020年に作られ、既にブルーレイ・DVDが発売、配信でも見ることができます。