2024/09/08(日)「夏目アラタの結婚」ほか(9月第1週のレビュー)
これは僕だけではなかったようで、「二本立ての併映作品との兼ね合いで約三十分のフィルムをカット」せざるを得なくなり、「そのために、物語としてはよくわからなくなってしまっている。どのような展開になっているのかだけではなく、人物関係もよく見えない」とあります。この映画、今年5月にDVDが出ています(だから連載で取り上げたのでしょう)。春日太一は姫田真佐久による撮影の素晴らしさも指摘していて、「その柔らかい世界には、長く浸りたい中毒性があった」と書いています。
カットの要因となった併映作を覚えてないんですが、Wikipediaにはこうありました。
「『シナリオ』1975年5月号の【邦画案内4月の封切予定作品】では『雨のアムステルダム』との併映で、1975年4月5日封切、25日までの上映と書かれているが、『雨のアムステルダム』は1975年3月21日に公開されている模様で、本作の併映作は不明」地方では1カ月ぐらい遅れて公開されることは珍しくなかったので、併映は「雨のアムステルダム」(蔵原惟繕監督)で間違いないんじゃないかと思います。東京の封切館が一本立て、二番館と地方が二本立て興行だったのでしょう。
「雨のアムステルダム」は高く評価された「約束」(1972年、斎藤耕一監督、キネ旬ベストテン5位)に続く萩原健一、岸恵子主演の映画ですが、つまらなかったのをよく覚えています。
「夏目アラタの結婚」
乃木坂太郎の原作コミックを堤幸彦監督が映画化。途中にやや停滞した部分があるにせよ、サイコキラーとの純愛というアクロバティックなテーマをきちんと感動的に着地させるのに感心しました。柳楽優弥と黒島結菜に拍手です。この2人、爆笑熱血青春ドラマ「アオイホノオ」(2014年・テレ東、福田雄一監督)以来10年ぶりの共演。黒島結菜が「炎くん、炎くん」と言いながら柳楽優弥の肩や腕を無邪気にペチペチたたいていたあのドラマでの、のどかで微笑ましい関係を思うと、感慨深いものがあります。元ヤンキーで児童相談員の夏目アラタ(柳楽優弥)は担当する少年の依頼で拘置所を訪れ、3人の男を殺して“品川ピエロ”の異名をもつ死刑囚、品川真珠(黒島結菜)に面会する。少年の父親は真珠に殺されて解体され、首が見つかっていなかった。父親の首を見つけたい少年はアラタの名前で真珠と文通しており、面会に来るよう言われたのだ。少年に代わって訪れたアラタを見た真珠は「イメージと違う」と言って、部屋を出ようとする。アラタは引き留めるために思わず、「俺と結婚しようぜ」と言ってしまう。1日の面会時間は20分。面会を続けるうちに真珠は「ボク、誰も殺してないんだ」と打ち明ける。
逮捕された時には太っていた品川ピエロが拘置所で痩せて黒島結菜の容姿になるところに物語上の意外性がありますが、太ったピエロも黒島結菜が特殊メイクで演じたそうです。真珠もアラタも不幸な生い立ちであり、その2人がお互いの真実を知って惹かれ合っていく過程が切なく、とても良いです。劇中、真珠が匂いを嗅ぐシーンがたびたびありますが、最後に明らかになるその理由も切ないです。
エンディングに流れるオリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」が映画の内容に合っていて良かったです(原作者が訳詞監修してました)。
▼観客15人ぐらい(公開初日の午後)2時間。
「YOLO 百元の恋」
「百円の恋」(2014年、武正晴監督)の中国版リメイク。ボクシング映画と言うより減量映画で、監督・主演のジャー・リン(「こんにちは、私のお母さん」)は体重を20キロ増やした後に1年かけて50キロ減らしたそうです。100キロ以上ある人が減量すると、腹の皮がだぶつくことがありますが、そんなこともなく、腹筋が割れてるのに感動します。105キロから50キロ台までの減量記録は映像とともにエンドクレジットに流れます。80キロ台で一時停滞するのは元の体重がそれぐらいだったからでしょう。それを突破してガンガン減量していくには大変な努力が必要だったはずで敬意を表します。
映画は前半、太って自堕落な生活を送る32歳の主人公ドゥ・ローインが家を出てボクシングに出会うまでがコメディータッチで描かれます。この部分の演出が緩くてマイナスポイント。本格的なトレーニングを開始するまで長すぎです。後半のトレーニングシーンに流れるのは「ロッキー」のテーマ。これは気分が上がる曲ですが、そのまま使うのは安易で、オリジナルを用意した方が良かったと思います。
ドラマの出来はジャー・リン本人の痩せる努力に比べると、力の入れ方が足りない印象です。ジャー・リンの減量過程に感動・感心する人が多いわけなので、それをドキュメンタリーにした方が話は早かったでしょう。
それにしてもコメディエンヌのジャー・リンが今後リバウンドしないかどうか、興味津々です。痩せたままなら、これまでの笑いのパターンを変えていく必要があるでしょうね。
IMDb6.9、ロッテントマト82%(アメリカでは限定公開)
▼観客10人ぐらい(公開2日目の午後)2時間9分。
「エイリアン ロムルス」
シリーズ第7作。悪評を目にして期待値が高くなかったこともあって、「予想していたほど悪くはない」というのが率直な感想。確かに過去のエイリアンシリーズ、特に第1作と同じ構図やシチュエーションの場面が多く、第1作の枠組み内で作られているのでオリジナリティーの面ではつらいんですが、サスペンスや恐怖の醸成自体に問題はありません。「ドント・ブリーズ」(2016年)のフェデ・アルバレス監督、よく頑張っています。時代は「エイリアン」と「エイリアン2」の間、2142年頃の設定。ジャクソン星の採掘場で過酷な労働を強いられているレイン(ケイリー・スピーニー)と忠実なアンドロイドのアンディ(デヴィッド・ジョンソン)はタイラー(アーリー・ルノー)ら4人に誘われて脱出を決意。小型宇宙船で飛び立つが、目的の惑星に行くには燃料が足りない。ロムルスとレムスという2つのモジュールから成る廃墟の宇宙ステーション・ルネサンス号で燃料を補給することにする。ステーションには多数のエイリアンの幼虫フェイスハガーが冷凍保存されていた。知らずに冷凍装置を解除してしまったことで、目覚めたフェイスハガーたちがレインたちに襲いかかる。
1作目ではアンドロイドのアッシュ(イアン・ホルム)がノストロモ号の乗組員を裏切る行為(会社の指令には忠実な行為)をしましたが、この映画でもアンディの行動が若者たちの生死を握ります。2020年に亡くなったそのイアン・ホルムが若い姿で登場することに驚きますが、これはアニマトロニクスで、遺族に許可を取り、全米俳優組合にも契約金を払ったそうです。
疑問があったのはエイリアンの成長速度が速すぎること。クライマックスに登場するアレも含めて、脱皮したら、すぐに成体になるのが上映時間の関係で仕方ないとは言え、リアリティーを欠きますね。
IMDb7.4、メタスコア64点、ロッテントマト80%。
▼観客3人(公開初日の午前)1時間59分。
「幸せのイタリアーノ」
フランス映画「パリ、嘘つきな恋」(2018年、フランク・デュボスク監督)をリメイクしたイタリア映画。車椅子の美女キアラ(ミリアム・レオーネ)と親しくなるために自分も車椅子の障害者と偽るプレイボーイの主人公ジャンニ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)の物語。大筋、悪くない話なんですが、障害者の描き方など細部に引っかかる部分があり、演出にもう少し細やかな配慮が欲しいところです。監督は「これが私の人生設計」(2014年)のリッカルド・ミラーニ。ミリアム・レオーネがとにかくきれいで、彼女を見るだけでも価値があります。レオーネはミス・イタリア出身で、日本でも数本の出演作が公開されていますが、僕は知りませんでした。
IMDb6.4(アメリカでは未公開)
「パリ、嘘つきな恋」はIMDb6.5。
観客6人(公開5日目の午後)1時間53分。
「きみの色」
タイトルは「きみの個性」と言い換えても成立する物語でした。主人公の高校生・日暮トツ子(声:鈴川紗由)は人の感情が色で見えます。きれいな青色を放つ作永きみ(声:高石あかり)に出会いますが、きみは突然、高校を中退。トツ子は古書店でアルバイトしているきみを見つけ、音楽好きのルイ(声:木戸大聖)とともにバンドを組むことになります。舞台設定があいまいなんですが、長崎市が協力しているので、長崎が舞台と考えて良いでしょう。トツ子ときみはルイの住む離島を訪れてバンド練習をするようになります。ルイの母親は島で唯一の医師で、ルイに病院を継ぐことを期待しています。ルイは音楽に打ち込んでいることを母親に隠しています。きみも高校を辞めたことを一緒に暮らす祖母に言えていません。
自分が好きなことと、肉親から期待されていることが違い、悩む若者を描いている点で「ブルーピリオド」と共通するものがあるなと思ってエンドクレジットを見ていたら、脚本は「ブルーピリオド」の吉田玲子でした。監督は「映画 聲の形」「リズと青い鳥」などの山田尚子。
▼観客8人(公開7日目の午後)1時間40分。
「モンキーマン」
「スラムドッグ$ミリオネア」「グリーン・ナイト」の俳優デヴ・パテルが監督・脚本・製作・主演を務めたアクション。元々はNetflixで配信予定でしたが、作品を見た「ゲット・アウト」「NOPE ノープ」のジョーダン・ピール監督が惚れ込み、プロデューサーとなって劇場公開を後押ししたそうです。インドが舞台ですが、英語作品です。主人公は闇のファイトクラブで猿のマスクをかぶって闘い、ヒールとして生計を立てていた。金を稼ぐ目的は幼い頃に母親を殺した悪党たちに復讐するためだった。
話は復讐譚なので筋立てはシンプルなんですが、前半、主人公の身の上を小出しに断片的に描いているのがまどろっこしいです。直線的に明確に描いた方が良かったでしょうし、恨みの対象である2人のうち、ボスの方をもっと詳しく描いた方が良かったと思います。
厨房のアクションは「ジョン・ウィック」や「アトミック・ブロンド」を、クライマックスは「燃えよドラゴン」を思わせました。デヴ・パテルはそうしたアクションの影響が濃厚のようです。これまでおとなしい役が多かったですが、体も筋肉質に鍛えているので、今後はアクションが増えていくのかもしれません。
中盤、敵に襲われて重傷を負った主人公を助けるヒジュラとは、Wikipediaによると、「インド、パキスタン、バングラデシュなど南アジアにおける、男性でも女性でもない第三の性(性別)」で、聖者として宗教儀礼に携わったり、この映画の集団のように差別される場合もあるそうです。
IMDb6.9、メタスコア70点、ロッテントマト89%。
▼観客5人(公開13日目の午後)2時間1分。
2024/09/01(日)「愛に乱暴」ほか(8月第5週のレビュー)
自分だけ経済的に成功していい気になってるヴァンスのキャラは最低でした。記事には「自分は貧困を抜け出したのだから誰でもできるはずで弁解は通用しない。それがバンスの言い分なのだ」とあります。そういう人物が副大統領候補というのは共和党は地に落ちたなと思います。
「愛に乱暴」
吉田修一の原作を「おじいちゃん死んじゃったって。」(2017年)、「さんかく窓の外側は夜」(2021年)の森ガキ侑大(ゆきひろ)監督が映画化。夫(小泉孝太郎)の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子(江口のりこ)は結婚して8年。義母(風吹ジュン)から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うように、センスのある装い、手の込んだ献立などいわゆる「丁寧な暮らし」で毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、愛猫の失踪、桃子がたびたび見ているSNSの不倫妊活コメント…。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、八方塞がりに追い詰められた桃子は床下への異常な執着を募らせていく。
公式サイトのこのストーリー要約では何も分からないので、付け加えておくと、夫は突然、「彼女に会って欲しいんだ」と打ち明けます。夫は若い女(馬場ふみか)と不倫していて、桃子も夫の不倫をうすうす疑っていました。ですから、香港に出張する夫に「誰と行くの?」と聞いたり、帰ってきた夫のスーツケースの中身を確かめたりします。
原作を読み始めたところですが、原作では主人公視点で語られる各章に別視点のエピソードが付加されています。映画がこれをSNSコメントに変えたのは脚色のうまいところ。ただし、このSNS、はっきり誰が書いたかを描いていないので、中には誤解したままの観客もいるのではないでしょうかね。
夫の不倫が分かったばかりか、細々と収入を得ていた石けん教室講師の職もなくなってしまい、主人公には鬱な展開。同情もしにくいキャラクターなので、映画の評価もそれに引きずられてしまった部分があるようです。
▼観客4人(公開初日の午前)1時間45分。
「サユリ」
押切蓮介の原作コミックを白石晃士監督が映画化。原作が全1巻だったので映画を見る前にKindle版を読みました。原作にはない「元気ハツラツ、お○○○マンマン」のNGワード(3回出てきます)があるので地上波テレビで完全な形での放映は無理(配信は大丈夫かな)。不幸な過去と引きこもりにより巨大に太ったサユリの姿も原作にはなく、映画のアレンジです。前半は中古住宅に引っ越してきた家族7人(祖父母、両親、子ども3人)が家に潜む何者かによって次々に死んでいく過程を描く普通のホラー。後半は生き残った祖母(根岸季衣)と長男・則雄(南出凌嘉)の反撃を描いています。
家に潜んでいるのがサユリの霊で、引っ越してきた一家が悪いわけではないので殺していくのは理不尽なんですが、幽霊屋敷ものでは「来た奴が悪い」というのが通常進行。認知症が進んでいた祖母が家族を殺された怒りに燃え、自分を取り戻して戦う姿がおかしくて面白く、根岸季衣が乗りまくりの演技を見せています。そこが見どころと言えば見どころ。則雄の同級生で霊感を持つ少女役をドラマ「ばらかもん」(2023年、フジテレビ)、「アンチヒーロー」(2024年、TBS)で注目を集めた近藤華が演じています。
▼観客30人ぐらい(公開5日目の午前)1時間48分。
「めくらやなぎと眠る女」
村上春樹の短編6本をフランスのピエール・フォルデス監督がアニメ化。見る前は6作品をそれぞれアニメ化したオムニバスかと思っていましたが、内容を再構成して2人の主人公の話にまとめてありました。この脚色は悪くないのですが、日本のアニメを見慣れた者からすると、キャラクターデザインに魅力がなく、「個性的」とか「変わった味がある」とかの形容しか思いつきません。もっとも、東日本大震災後(原作では阪神・淡路大震災後)に家を出て行く主人公の妻は原作(「UFOが釧路に降りる」)によると、「容貌はまったく十人並み」で「性格もとくに魅力的とは言えなかった。口数は少なく、いつも不機嫌そうにしていた。小柄で、腕が太く、いかにも鈍重そうに見えた」とあるので、このキャラに関しては原作通りとも言えます。
原作をまとめておくと、以下の通りです。
「かえるくん、東京を救う」(「神の子どもたちはみな踊る」新潮文庫)この6本を選んだ理由を知りたいところですが、公式サイトでは特に言及されていません。フォルデス監督は「史上最も偉大で最もインスピレーションに溢れた作家の作品から得たひらめきと、アニメーションにおいてテクニックだけではなく語り方をも一新しようとした野心の産物なのです。(中略)私にとってこの映画は、控えめに言っても近年作られた最も革新的な長編アニメーションなのです」と自画自賛気味にコメントしています。
「UFOが釧路に降りる」(同)
「バースデイ・ガール」(「バースデイ・ガール」新潮社、「バースデイ・ストーリーズ」中央公論新社)
「かいつぶり」(「カンガルー日和」講談社文庫)
「ねじまき鳥と火曜日の女たち」(「新装版 パン屋再襲撃」文春文庫)
「めくらやなぎと眠る女」(「螢・納屋を焼く・その他の短編」新潮文庫)
日本語吹き替え版は磯村勇斗、玄理、塚本晋也、古舘寛治らが声を演じており、深田晃司監督が演出しています。
▼観客4人(公開初日の午後)1時間49分。
「マミー」
1998年7月に起きた「和歌山毒物カレー事件」を検証したドキュメンタリー。無実を訴え続ける林眞須美死刑囚の家族(夫と長男)のインタビューと再審を訴える市民団体の動き、当時の警察・検察・マスコミ・裁判関係者、現場周辺住民の取材・インタビューで構成しています。重点となるのは目撃証言の信憑性とヒ素の鑑定結果で、どちらにも疑問が残されていることが分かります。当時のマスコミの過熱報道で犯人は林眞須美と、ほとんどの人は思っていたでしょう。警察の捜査もそれに影響されたのではとの疑いが浮上してきます。林眞須美死刑囚への疑いを濃くした詐欺事件に関しては夫主導の犯行であり、ヒ素を呑まされた被害者とされた夫が実は保険金詐欺のために自分で舐めたことをインタビューで答えています。当時、これが分かっていたら、林眞須美逮捕には至らなかった可能性もあるでしょう。
ドキュメンタリー「正義の行方」(2024年、小寺一孝監督)で描かれた飯塚事件のように警察がDNA検体を捨てるという、スットコドッコイなことにはなっていないのでまだましですが、再審を認めないようではどうしようもないですね。カレーに入っていたヒ素が林家にあったものと同じかどうかを現代の技術で再度調べないと、警察が証拠隠滅を図ったとしか思えない飯塚事件と同じことになってしまいます。
ドキュメンタリーの作りとしてはあまりうまくありませんし、二村真弘監督が関係者宅への不法侵入で警察沙汰になるのはやり過ぎでしょうが、冤罪の可能性を検証したことは有用だと思います。
▼観客7人(公開2日目の午後)1時間59分。
2024/08/25(日)「ラストマイル」ほか(8月第4週のレビュー)
「ラストマイル」
座席が揺れるような大音響とともに描かれる爆発場面の迫力に圧倒されます。映画は宅配便で届いた荷物の開封で爆発する謎の連続爆破事件を描いていますが、爆弾の威力に比べて死者数が増えていかないなと序盤を見ながら思っていました。見終わってみれば、この死者数も脚本の意図を反映したものであることが分かります。物流現場のラストワンマイルを担う労働者の搾取と疲弊という社会派的視点を盛り込んだ野木亜紀子の脚本は何よりもエンタメとしての完成度がかなり高いです。特にミステリーとしてよく出来ていて、犯人像を含めた構成の見事さに感心させられました(犯人の隠し方は用意周到で、パンフレットの該当ページも閉じた作りになっています)。ネタバレを目にすることを徹底的に避け、1日も早く映画館で見ることを強くお勧めします。
傑作ドラマ「アンナチュラル」(2018年)「MIU404」(2020年)とのシェアード・ユニバース・ムービーと喧伝されていて、確かに塚原あゆ子監督ら制作スタッフは「アベンジャーズ」(2012年、ジョス・ウェドン監督)のような作品を目指していたそうですが、2つのドラマのメンバーの出番が大きく割り当てられているわけではありません。それでもドラマを見ていた人には嬉しくなるような使い方であり、単なる顔見せ程度のゲスト出演でもありません。「アンナチュラル」のUDIラボの解剖医・三澄ミコト(石原さとみ)も、「MIU404」の四機捜の刑事・志摩(星野源)と伊吹(綾野剛)も犯人の手がかり解明に大きな役割を果たしています。UDIのもう一人の解剖医・中堂(井浦新)が「く…、く…」と言いよどむ理由(思わず笑ってしまいます)はドラマを見ていないと分かりません。
伏線回収の見事さとか、恐らくキャリアベストと思える満島ひかりの演技とか、それをしっかりと受け止める岡田将生とか、隅々に至るまでの役者のキャラの描き分けのうまさとか、褒め始めると切りがありません。この作品、全体的にバランスの良さが突出しています。
野木亜紀子は社会派テーマに力点を置けば、沖縄を舞台にした昨年放送の連続ドラマ「フェンス」(全5話、WOWOW)のような作品になるのでしょうが、あのドラマのクライマックス、警官の青木崇高が米軍の上官に暴行容疑者の引き渡しを必死に訴えるシーンの熱い感動も実はエンタメ的な描き方から生まれていました。観客を楽しませるツボを外さない、良い意味でのエンタメ気質に貫かれた人なのだと思います。年初の「カラオケ行こ!」(山下敦弘監督)とこの映画で今年の脚本賞は野木亜紀子に決まりでしょう。
その野木亜紀子は塚原あゆ子監督の演出について、終盤のあるシーンを例に出し「すごいですよね!あのカットは震えます。最高!塚原あゆ子!」とインタビューで絶賛しています。塚原監督はスケールの大きな演出の一方で、無茶な要求に悩まされる配送会社の中間管理職・阿部サダヲや下請け配送業者の火野正平・宇野祥平親子の細やかな描き方でも冴えを見せています。
10月期のTBS日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」は野木亜紀子脚本、塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーというこの映画のチームが担当するとのこと。塚原監督はその後に「グランメゾン・パリ」、坂元裕二脚本の「1ST KISS ファーストキス」と公開予定の作品が続き、一気に売れっ子になった観があります。テレビドラマで長年積み上げてきた経験が今、花開いているのでしょう。
▼観客多数(公開初日の午後)2時間9分。
「箱男」
安部公房の原作を石井岳龍監督が映画化。27年前にも日独合作で石井監督による映画化が企画されましたが、撮影開始前日に中止になったそうです。監督自身の説明によれば、日本側の資金の問題が理由だそうです。今回の映画は石井監督にとって長年の思いをこめた企画の実現ということになるのでしょう。映画は1960年代から70年代にかけてのアングラ・前衛映画を思わせる味わいがあり、中盤が分かりにくくなっています。寺山修司監督の「田園に死す」(1974年)を見た時に「ワケ分からないけど、このイメージの奔流はものすごい」と感じたことを思い出しました。「箱男」にはそこまでのイメージの奔流はありませんが、「見る見られる」の関係の逆転を描いた分かりやすいメッセージをラストに用意したことがこの映画の大きな美点になっていると思いました。
主演の永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市のベテラン俳優に交じって謎の女を演じる白本彩奈の頑張りが目立ちます。
▼観客5人(公開初日の午前)2時間。
「クレオの夏休み」
父親とパリで暮らす6歳の女の子クレオ(ルイーズ・モーロワ=パンザニ)は乳母のグロリア(イルサ・モレノ・ゼーゴ)が大好きだったが、ある日、母親の死去に伴い、グロリアは故郷へ帰ることになる。夏休みを迎えたクレオはグロリアに会うため単身海を渡り、アフリカの島国カーボベルデへ向かう。物語はマリー・アマシュケリ監督の0歳から6歳まで世話になった乳母との体験を基にしているそうです。ドキュメントタッチでクレオとグロリアの関係を描きつつ、子どもの自分勝手で残酷で、でもそうなるのが仕方ない面もしっかり描いています。物語を構想する段階で監督がイメージしていたのは「メリー・ポピンズ」(1964年、ロバート・スティーブンソン監督)だったそうです。なるほど。
IMDb7.0、メタスコア81点、ロッテントマト100%。
▼観客3人(公開5日目の午後)1時間23分。
「大いなる不在」
認知症の父親をリアルに演じる藤竜也が演技賞の候補になるのは必至。しかし、ミステリー的な興味で引っ張る物語と認知症という題材がうまく融合していないきらいがあります。端的に言えば、この映画で提示される謎のすべては認知症の父親から事情を聞けないことから生まれており、あまり上等な作りとは言えないからです。監督は「コンプリシティ 優しい共犯」(2018年)の近浦啓。▼観客9人(公開7日目の午後)2時間13分。
「赤羽骨子のボディガード」
つまらないだろうと予想して見ましたが、いやあ、個人的にはまずまず満足できる仕上がりでした。ボディガードを務めるラウールと出口夏希のおかしな関係は「俺物語!!」(2015年、河合勇人監督)の鈴木亮平と永野芽郁を思わせました。赤羽骨子の友人の高橋ひかるとアイパッチの敵役・土屋太鳳という主演級の2人が脇に回って存在感を見せ、特に一見こわもて、実は純情な土屋太鳳の役柄が良いですね。このほか、奥平大兼、倉悠貴、戸塚純貴、鳴海唯、長井短、木村昴など若手俳優が多数出ていて、それぞれにアクションをしっかり見せているのにも好感。アクションコーディネーターは「地獄の花園」(2021年、関和亮監督)、「Gメン」(2022年、瑠東東一郎監督)などの富田稔。監督は「変な家」の石川淳一。
▼観客30人ぐらい(公開20日目の午後)
2024/08/18(日)「ブルーピリオド」ほか(8月第3週のレビュー)
amazonでは中国製のポータブル電源やソーラーパネル(に限らず多数の中国製品)が販売されていてレビューも良いんですが、サクラチェッカーで調べると、ほとんどが偽のレビュー(さくら)と判定されます。明らかな詐欺製品は言うに及ばず、一見まともな粗悪製品もありますから注意が必要です。
「ブルーピリオド」
YOASOBIの名曲「群青」は「ブルーピリオド」の原作コミック(山口つばさ)にインスパイアされたものだそうです。映画を見た後に聴くと、Ayaseが書いた詞は物語のエッセンスをうまく掬い上げていることが分かります。映画は好きなものに打ち込む青春を描いて「線は、僕を描く」(2022年、小泉徳宏監督)、「ルックバック」に連なる「アート系スポ根」の傑作だと思います。高校2年の矢口八虎(眞栄田郷敦)は毎夜、渋谷の街に繰り出していたが、成績は優秀。一方で空虚さも抱えていた。ある日、美術室で一枚の絵に出合う。それは3年の森まる(桜田ひより)が描いた緑色の天使の絵だった。八虎はそれに影響を受けて、夜明けの青く見える渋谷を描いてみた。美術に興味を持った八虎は進学先を東京藝大に変え、合格を目指す。
かつては社長と言われた父親(“ずん”のやす)は今、昼間より高い賃金が得られる夜勤の仕事に就き、母親(石田ひかり)はパートで働いていて、八虎を私立大に行かせる余裕はありません。成績優秀な八虎に安定した仕事に就けるような将来を望む母親は「絵は趣味にしておけばいいじゃない」と国立の藝大進学にも反対します。疲れ切った母親がテーブルに突っ伏して寝ている姿を八虎がスケッチするシーンがしみじみと良く、ここで母親は息子の絵に対する本気度を初めて理解します。
映画には競争倍率の高い東京藝大受験に失敗する若者も多数描かれます。自分の好きな道に進むことの困難と大変さもしっかり描くことで、この映画は逆にそうした現実と夢の間で悩む若者の背中を押す効果も持ち得ているでしょう。
眞栄田郷敦はサキソフォンでプロを目指して実際に東京藝大を受験(不合格)した経験があるそうで、この役にぴったりのキャスティング。萩原健太郎監督は前作「サヨナラまでの30分」(2020年)で新田真剣佑を主演にしていましたから、2作続けて俳優兄弟を起用したことになります。
▼観客11人(公開4日目の午前)1時間55分。
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」
1996年に実際に起きた13歳の少年と36歳の女性のスキャンダル“メイ・ディセンバー事件”を基にしたトッド・ヘインズ監督作品。実際の事件では教師と生徒の関係でしたが、映画は大きく脚色していて、事件をなぞるのではなく、年の離れた男女のその後と、そこに入ってきた女優の姿を描いています。主演はヘインズ監督の「エデンより彼方に」(2002年)などでも主演したジュリアン・ムーアと、「ブラック・スワン」(2010年、ダーレン・アロノフスキー監督)を思わせる役柄のナタリー・ポートマン。事件が映画化されることになり、役のリサーチのためにグレイシー(ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)夫婦のもとを訪れる女優のエリザベス(ポートマン)は次第に夫婦に、特にグレイシーに影響されていきます。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」とのニーチェの言葉のような状態に陥っていくわけです。ポートマンは43歳ですが、相変わらず魅力的です。
ポートマンはサミー・バーチの脚本を読んで惚れ込み、ヘインズ監督に脚本を送ったそうです。ヘインズはイングマール・ベルイマンの傑作「仮面 ペルソナ」(1966年)を想起したそうですが、完成した映画はベルイマン作品ほど難解ではありません。ただ、一般観客に分かりやすい展開でもなく、そこが評論家の評価との乖離に現れているようです。
IMDb6.8、メタスコア86点、ロッテントマト91%。アカデミー脚本賞ノミネート。
▼観客10人(公開7日目の午後)1時間57分。
「フォールガイ」
フィル・コリンズの大ヒット曲「Against All Odds」(1984年、日本語タイトル「見つめて欲しい」)をカラオケでエミリー・ブラントが歌うシーンにぐっときました。いや、シーンが良かったからではなく、歌が懐かしかったんです。この歌、「カリブの熱い夜」(1984年、テイラー・ハックフォード監督)でも使われました。というか、Wikipediaによると、当初は“How Can You Just Sit There?”というタイトルの予定だったそうです。映画のタイトルに合わせて変えたんですね。スタントマンのコルト・シーバース(ライアン・ゴズリング)は撮影中に大怪我を負い一線を退いていたが、元カノのジョディ・モレノ(エミリー・ブラント)が初監督を務める作品でカムバックする。ジョディに未練のあるコルトは彼女の気を引こうとスタントに奮闘するが、主役俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)が突然姿を消す。ジョディとの復縁とスタントマンとしてのキャリアの復活を企むコルトはトムの行方を追うことになるが、予想外の事件に巻き込まれる。
監督は「ブレット・トレイン」(2022年)のデヴィッド・リーチ。話は新味に欠けるものの悪くありませんし、アクションシーンも良いんですが、演出が大味。「ブレット・トレイン」は緩さも魅力でしたが、この作品にはタイトさが必要です。
IMDb6.9、メタスコア73点、ロッテントマト82%。
▼観客25人ぐらい(公開初日の午後)2時間7分。
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」
双子姉妹の初恋を双子の姉妹監督(ワンウェーウ・ホンウィワットとウェーウワン・ホンウィワット)が描いたタイ映画。主演のティティヤー・シラボーンシンは双子ではありません。2000年問題やノストラダムスの大予言が話題になる1999年が舞台。なんでもシェアしてきた高校生の双子姉妹ユーとミーの前にハンサムなマーク(アントニー・ブィサレー)が現れる。マークは家庭の事情で高校をやめ、田舎のナコーンパノムに帰るが、ユーとミーも離婚寸前の母親の実家に帰り、そこでマークと再会する。ユーとミーはマークとの仲を深めていくが、シェアができないことで2人の関係に影響を及ぼしていく。
途中まで悪くないなと思っていましたが、どうも終盤が長く感じます。そこである事件が起きるんですが、間延びした感じを解消するには至っていません。1時間半程度にコンパクトにまとめたいところでした。
▼観客7人(公開3日目の午後)2時間2分。
「お母さんが一緒」
ペヤンヌマキ作の同名舞台劇を「恋人たち」(2015年)の橋口亮輔が脚色・監督した作品。母親を温泉に連れてきた三姉妹(江口のりこ、内田慈、古川琴音)の確執を描き、いかにも元が舞台劇といった感じの作品に仕上がっています。一緒に温泉に来た母親が一切画面に登場しない設定も含めて、三姉妹それぞれの個性と確執は面白いんですが、あまりうまさは感じませんでした。
▼観客7人(公開5日目の午後)1時間46分。
2024/08/11(日)「Chime」ほか(8月第2週のレビュー)
「Chime」
黒沢清監督の短編ホラー映画。ショッキングな描写と不気味な演出の連続で、監督の過去の作品と同じイメージがいくつも出てきます。狂気が連鎖・感染していくあたり、僕は「回路」(2001年)を想起しました。料理教室の講師・松岡卓司(吉岡睦雄)の教室で生徒の田代(小日向星一)が「チャイムのような音で誰かがメッセージを送ってきている」と言い出す。田代は教室で孤立し、少し変わっていると言われていた。別の日、田代は「僕の脳の半分は入れ替えられて、機械なんです」と言い出し、突然、首に包丁を突き立てる。また別の日、松岡は若い女性の生徒・菱田明美(天野はな)を教えている途中、鶏が気持ち悪いと文句を言う明美に怒って何度も包丁を突き刺す。
訳の分からない怖さを描いた作品で、松岡の行動に説明はなく、自宅では妻(田畑智子)が毎日大量の空き缶を捨てていたり、息子(石毛宏樹)が食事中に突然大声を上げたりしますが、これも特に理由は説明されません。家のドアを開けると、不穏な大音響が流れるシーンなど恐怖の存在は何も映らないのにそれだけで怖いです。メディア配信プラットフォームのRoadsteadオリジナル作品第一弾。
IMDb6.7。
▼観客6人(公開初日の午後)45分。
「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」
「殺さない彼と死なない彼女」(2018年)「恋は光」(2022年)の小林啓一監督作品。非公認の新聞部で学園の不祥事に切り込んでいく部員たちを描いています。トロッ子は記者(汽車)のレベルには届かないトロッコの意味(そう呼ばれた主人公が「駄洒落か」とつぶやくのがおかしいです)。文学少女の所結衣(藤吉夏鈴)は憧れの作家“緑町このは”が在籍する私立櫻葉学園高校に入学する。しかし、エリート集団の文芸部の入部テスト中に教室に侵入してきたドローンの直撃を受けて気を失い、入ることができなかった。落ち込む結衣に、文芸部部長の西園寺茉莉(久間田琳加)が正体不明の作家“このは”を見つけ出せば入部を許可する、という条件を出す。結衣は学園非公認の新聞部に潜入し、部長の杉原かさね(高石あかり)や副部長・恩田春菜(中井友望)の下で、新米記者として活動することになる。教師たちの不祥事を暴く新聞部を快く思わない学園の理事長・沼原(高嶋政宏)は理不尽な圧力をかけ、新聞部は窮地に立たされる。
宮川彰太郎の原案は母校・日大の悪質タックル問題と不祥事から着想を得たものだそうですが、大学ならともかく高校だと、理事長に小物感があります。だから理事長を追及する姿勢にも“ごっこ感”を感じてしまいます。それを除けば、ユーモアを絡めた小林監督らしい作品になっています。
藤吉夏鈴はNHK夜ドラ「作りたい女と食べたい女」での会食恐怖症の役が実にぴったりでした。この映画では演技に堅さが少し見られますが、主役を張る力はあると思いました。高石あかり、久間田琳加、中井友望も好演。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午後)1時間38分。
「リバウンド」
部員が6人しかいない高校の弱小バスケットボール部が2012年の全国大会で快進撃した実話を基にした韓国映画。落ちこぼれチームがゴタゴタを克服しながら勝利に向かうパターンで、普通に良く出来ていますが、これまでに何度も描かれてきたタイプの作品なので目新しさに欠けるのが難です。元バスケットボール選手のカン・ヤンヒョン(アン・ジェホン)が廃部の危機にある釜山中央高校バスケットボール部のコーチに抜擢される。寄せ集め部員を引き連れて、初試合に挑むことになるが、対戦相手はバスケットボールの最強校だった。チームワークは崩れ、結果は惨敗。学校側はバスケットボール部廃部を議論し、部員もバラバラになってしまう。
全国大会で1人の選手が鎖骨を折る重傷を負ってしまい、残りの試合は交代要員のいない5人で闘うことになります。それでも決勝まで進んだのは大したものですが、描かれるのは決勝戦の途中まで。あとは字幕処理となります。ファール5回で2人が退場したため途中から3人で闘ったというのが驚きですが、そこは描かれません。そこを含めて決勝をじっくり描いた方が良かったんじゃないですかね。
監督はチャン・ハンジュン。
IMDb6.9。アメリカでは未公開。
▼観客2人(公開初日の午後)2時間2分。
「THE MOON」
米国に次ぐ有人月面着陸を目指す韓国の宇宙船が事故を起こし、1人生き残った宇宙飛行士の救出をめぐるサスペンス。唖然とするほど雑な映画です。38万キロ離れた地球と月の交信がリアルタイムでできたり(実際は電波が届くのに片道1秒余かかるので、往復で3秒近いディレイになります)、月の裏側と交信できたり(これ、前半はできない設定が生きてるんですが、後半は普通に何の問題もなくできてしまってます)、もしかして地球のどこかと交信してるのかと思えるほどです。ああ、だから劇中とエンディングに先日のスカーレット・ヨハンソン主演映画と同じく「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」(グレッグ・バーランティ監督)が流れるわけですね。
クライマックスに主人公(ソル・ギョング)の過去のロケット爆発事故に関する秘密が明らかになりますが、これがもう最低のキャラであることが分かるぐらいダメダメなエピソード。普通はこういう人、悪役に分類されるでしょうし、おまえのそういういい加減なところが事故の原因だろ、と思えます。緻密さが要求される宇宙開発に携わってはいけない人物で、だから5年間も閑職に追いやられていたわけですが。クライマックスの命令無視の救出劇も能天気なもので、リアリティーを徹底的に欠いてしまっています。
映画化すれば失敗が目に見えてるぐらい雑な脚本なのに、よくこれで映画化を許可しましたね。製作者の目は節穴でございますか? 監督は「神と共に」2部作(2018年)のキム・ヨンファ。緻密さが要求される映画には向かない人なのでしょう。
IMDb5.9、ロッテントマト33%。アメリカでは限定公開。
▼観客6人(公開6日目の後)2時間9分。