2011/05/14(土)「左ききの狙撃者 東京湾」

 1962年の野村芳太郎監督作品。DVDは出ていないようなので、書いておくと、これすごい傑作です←オーバー(^^ゞ

 WOWOWのストーリー要約を引用すると、「麻薬密売組織に潜入捜査を行っていた麻薬取締官が何者かに射殺され、死体の状況から犯人は左利きであることが判明。捜査一課のベテラン刑事・澄川は、まだ若手の刑事で妹の恋人でもある秋根とコンビを組んで、捜査に当たることになる。組織の一員と思しき武山をマークして尾行するさなか、澄川は、旧友の井上と10年ぶりに再会。井上は、かつて戦場で彼の命を危うく救ってくれた命の恩人で、左利きの優秀な狙撃兵でもあった」ということになる。井上が狙撃者であるわけだが、この映画が面白いのは井上の境遇が明らかになる後半だ。

 戦争から故郷の尾道に帰った井上は女に3人失敗し、東京に出てくる。妻と2人で東京湾に続く川のほとりでボート屋を営んでいる。今の妻は少し知的障害があり、井上がいないと買い物もできない。しかし、純粋に一途に井上を愛している。尾道に行くと言って家を出た井上を待ち続ける笑顔が切ない。

 脚本は松山善三と多賀祥介。上映時間は1時間24分。シャープで切れ味の鋭いドラマ。今のだらだらと2時間以上もある映画よりずっと知的な展開だ。刑事澄川役に西村晃、井上役に玉川伊佐男。