2024/05/12(日)「猿の惑星 キングダム」ほか(5月第2週のレビュー)

 11日放送のドラマ「花咲舞が黙ってない」(日テレ)に半沢直樹が登場しました。池井戸潤の原作にも登場するそうですし、先週の予告編でも描かれていましたから登場するのは分かってましたが、問題は誰が演じるか、でした。放送局が違うので堺雅人は無理でしょうし、さて。

 ネットニュースにもなってますから書いて良いと思いますが、劇団ひとりでした。主役の今田美桜以上に目立つわけにもいきませんし、意外性があって悪くないキャスティングだと思いました。

「猿の惑星 キングダム」

 「猿の惑星 聖戦記」以来7年ぶりの続編。2011年に始まった新シリーズで猿(エイプ)のリーダーとなったシーザーの死から300年後の世界を舞台に、ウイルスによって退化した人間と進化したエイプたちの物語が描かれていきます。

 ワシを飼い慣らし、魚の漁をさせて暮らすイーグル族の村が甲冑をまとったエイプの軍隊に襲われる。主人公のチンパンジーのノア(オーウェン・ティーグ)は辛くも生き残り、連れ去られた仲間たちの後を追う。途中、オランウータンのラカ(ピーター・メイコン)と人間のメイ(フレイヤ・アーラン)と出会い、一緒に旅を続ける。ノアの仲間を連れ去ったのは王国を築こうとしていたプロキシマス・シーザー(ケヴィン・デュランド)と名乗るエイプで、人間や多くのエイプたちを奴隷にしていた。プロキシマスは人間が残した軍事力を貯蔵する倉庫の扉を開けようと画策していた。

 監督は前作のマット・リーヴスから「メイズ・ランナー」(2014年)シリーズのウェス・ボールに代わりましたが、物語も演出もVFXも水準は保っています。というか、僕は良い出来だと思いました。

 1968年の旧シリーズ第1作にあった人間狩りのシーンが復活したのは第1作と同じような状況だからですが、当然のことながら第1作のような衝撃はありません。内容そのものが旧第1作と第2作の変奏曲のようなプロットです。話はまだ続きそうなので、また三部作になるのでしょうかね。
IMDb7.3、メタスコア64点、ロッテントマト80%。
▼観客40人ぐらい(公開初日の午前)2時間25分。

「不死身ラヴァーズ」

 両思いになると、相手が消えてしまうという高木ユーナの原作コミックを松居大悟監督が映画化。原作(全3巻)の1巻だけを読んだら、映画は原作とは男女を入れ替えてありました。これは多分、主演の見上愛側からの企画で見上愛を主演にする必要があったから変えたのだろうと思ったら、10年前、まだ原作が雑誌連載中だったころからの松居監督の念願の企画で、見上愛の主演はオーディションで決まったそう。

 でもこれは見上愛を主演にして正解だったと思います。一途に恋する女子を演じて、見上愛は元気いっぱい、笑顔全開の全力演技で好感度100点満点でした。

 映画は幼い頃に病院で死にかけている自分を助けてくれた甲野じゅん(佐藤寛太)を一途に好きになり続ける長谷部りの(見上愛)を描いています。甲野に告白し、甲野も好きになってくれた途端に甲野は消えてしまいますが、甲野は何度も立場とキャラを変えて、りのの前に現れ、りのが告白し、甲野が消えるというパターンを繰り返します。後半、大学時代に現れた甲野は記憶が1日しか持たない障害を持っていて(またこの設定かと思うわけですが)、甲野が忘れても忘れてもめげずに毎日告白を続け、それに幸せを感じるりのが微笑ましくて、おかしくて良いです。

 ただ、終盤に明らかになる相手が消える理由と仕組みがいまいち説得力を欠きます。合理的な理由にするのは難しいので、ファンタジーにした方が良かったのではないかと思いました。

 見上愛を最初に認識したのは「異動辞令は音楽隊!」の時で、「あれ、出演者の中に名前がないのに小松菜奈が出てる」と勘違いしたのでした。出ていたのは小松菜奈ではなく、見上愛だったわけですが、この二人、顔つきがよく似ています。初の単独主演となったこの映画で、はっきり見上愛の良さが分かりました。コメディエンヌの素質十分なので、そういうジャンルで頑張ってほしいです。
▼観客6人(公開2日目の午前)1時間43分。

「無名」

 日中戦争時代の上海を舞台に中国共産党、国民党、日本軍の間で繰り広げられるスパイ活動を描くサスペンス。人間関係が入り組んでいて、誰が敵か味方か分からず、終盤になって話の行き先がようやく分かりました。ラストのセリフは「今の中国映画ではまあ、そりゃそうだろうな」という感じ。

 主人公は中華民国・汪兆銘政権の諜報員フー(トニー・レオン)とその部下イエ(ワン・イーボー)。汪兆銘政権は日本の傀儡なので、日本軍とは近しいわけですが、そんなに単純には行かず、スパイには付きものの裏切りと非情さが混在した展開になっています。当時の中国情勢を知っていないと、理解しにくい部分があり、中国でも若い世代には分かりにくいんじゃないですかね。話を少しすっきりさせた方が良かったと思います。

 監督は日中戦争前夜の上海を舞台にした「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海」(2016年)のチェン・アル。
IMDb6.3、メタスコア59点、ロッテントマト76%。
▼観客13人(公開6日目の午後)2時間11分。