2011/05/02(月)「運命のボタン」

 リチャード・マシスンの原作を映画化。といっても、原作に基づいているのは最初の30分で、あとは映画のオリジナルである。そしてこの部分が三流SFといった感じにしかなっていない。この話なら1時間のドラマで十分じゃないかと思えてくる。結局、途中に描いてあることが消化不十分なまま終わっているのである。キャメロン・ディアス主演。監督は「ドニー・ダーコ」のリチャード・ケリー。

2011/05/02(月)「フランケンシュタイン 野望」

 ディーン・クーンツの小説。天才科学者ビクター・フランケンシュタインが200年後の今も生きていて、新人種を多数作り出しているという設定。新人種は社会の至る所に送り込まれ、旧人種(つまり今の人間)を絶滅させる日に備えている。臓器など体の一部を切り取る凄惨な連続殺人事件の捜査をしていた女性刑事カースンとマイケルはフランケンシュタインの存在にたどりつく。フランケンシュタインが最初に創造したモンスターはデュカリオンと名乗り、やはりフランケンシュタインの野望を阻止しようとしていた。

 シリーズの第一弾。連続殺人事件だけで話が終わるのはいかにも導入部という感じだが、物足りないことこの上ない。話の密度が薄いのだ。元々、マーティン・スコセッシも企画に加わったテレビシリーズ用に書いた原作だが、制作者と意見が合わず、クーンツもスコセッシも降板した。テレビシリーズ自体もパイロット版(2004年、マーカス・ニスペル監督)だけで頓挫したとのこと。同じクーンツのオッド・トーマスシリーズは1作目が素晴らしかったので、4作目まで読んだが、そのシリーズを中断してこれにとりかかる必要があったとは思えない。といっても水準はクリアしている。パイロット版は「デュカリオン」としてDVDが出ている。新たに映画化の話があるそうだ。

2011/05/02(月)「誰がため」

 2008年のデンマーク映画(チェコ、ドイツ合作)。ナチス・ドイツ占領下のデンマークで、 レジスタンスの闘士フラメンとシトロンは 上司のヴィンターから指令を受け、対独協力者を暗殺していた。だが次第に2人には自分たちの行動は誰のためになっているのか、との疑念が芽生え始める。

 実話の映画化には珍しく、陰謀と裏切りが渦巻くギャング映画のような作りになっている。それがとても魅力的だ。社会派というよりエンタテインメントの要素が大きい。原題はFlammen & Citronen(フラメンとシトロン)。フラメン役のトゥーレ・リントハートは初めて見る役者だが、クールな雰囲気が良い。シトロンを演じるのは「007 カジノ・ロワイヤル」などのマッツ・ミケルセン。監督はオーレ・クリスチャン・マセン。2008年度のデンマーク・アカデミー賞で5部門を受賞したそうだ。

2011/04/30(土)「カティンの森」

 第2次大戦中、ポーランド軍将校ら1万2000人が虐殺されたと言われるカティンの森事件をアンジェイ・ワイダ監督が映画化。ワイダ監督の父親も事件の犠牲者であるという。この映画を撮った時、ワイダ監督は80歳を超えていたが、硬質で緊張感あふれる画面構成は老いを感じさせない。機械的に淡々と行われるラストの処刑シーンには背筋が凍り付く。

 戦後、ソ連に支配されたポーランドで事件が封印されたことも怖い。ソ連は事件をドイツ軍の犯行として喧伝し、異を唱える者を迫害する。それでも自分に嘘をつくことを拒否する人々の姿が胸に迫る。ワイダ監督らしい人物像だ。ドイツ軍とソ連軍に支配され続けたポーランドの悲劇を描き、被支配者の怒りに満ちた傑作。

2011/04/30(土)「エリザベス:ゴールデン・エイジ」

 クライマックス、スペインの無敵艦隊との戦いが弱い。戦いの断片を描くだけで全体像が見えてこないのだ。監督のシェカール・カプールはスペクタクルな描写に興味がないのだろう。というか、撮れないのだろう。

 1998年の「エリザベス」から9年後に撮られた同じスタッフ、キャストによるエリザベス1世の物語。ケイト・ブランシェットは好きな女優なのだが、コスチュームプレイは似合わないと思う。「エリザベス」よりもその次の「バンディッツ」で僕はブランシェットの魅力が分かった。