2025/02/23(日)「ブルータリスト」ほか(2月第3週のレビュー)

 Googleで「カーネーション 夏木マリ 何話から」と検索すると、以下の要約が出ます。
 「NHK連続テレビ小説『カーネーション』で夏木マリが演じる糸子の登場は、第145話からになります」(Search Labs | AI による概要)
「カーネーション 夏木マリ 何話から」の検索結果
 間違いです。実際には128話からでした。以前、この検索をしていたので、昨日の再放送127話の後の予告編に夏木マリが出てきて驚き、NHKオンデマンドで確かめたら、確かに128話から尾野真千子に代わって夏木マリが72歳の小原糸子を演じてました。

 GoogleのAIはBS12トゥエルビのサイトにある各週の概要紹介「145~151話」を見て、早とちりしたようです。当然のことながら、AIが常に100%正しいわけではないのです。それにしても尾野真千子が出ないとなると、「カーネーション」を見る意欲はだだ下がりです。

 NHKと言えば、アカデミー賞授賞式生中継の詳細が発表されました。司会は廣瀬智美アナウンサー、ゲストは佐々木蔵之介とトラウデン直美。レッドカーペット中継もやるそうです。良かったです。

「ブルータリスト」

「ブルータリスト」パンフレット
「ブルータリスト」パンフレット
 ホロコーストを生き延び、アメリカへ渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家ラースロー・トートの戦後の歩み描いた作品。タイトルは「打ち放しコンクリートやガラス等の素材をそのまま使い、粗野な印象の建物」の様式であるブルータリズムを行う建築家を意味しています。

 序曲、第一部「到着の謎 1947-1952」、第2部「美の核芯 1953-1960」、エピローグ「第1回建築ビエンナーレ 1980」で構成する3時間35分(インターミッション15分含む)。「序曲」のある映画はかつては「ベン・ハー」や「ウエスト・サイド物語」「2001年宇宙の旅」などありましたが、最近ではあまり見かけません。この映画の序曲は短いものの、こうした立派で本格的なパッケージングにより見応えは十分あります。ただ、大作感はそれほどなく、物語も通俗的と言えるものでした。

 大作感に乏しいのは物語の中心が1947年から1960年までの13年しかないためもあるでしょう。前半はペンシルバニアに住む従兄弟を頼って単身渡米したラースロー(エイドリアン・ブロディ)が富豪のハリソン・ヴァン・ビューレン(ガイ・ピアース)と出会い、大規模な礼拝堂とコミュニティセンターの設計と建築に携わるまでの5年間、後半は妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)と姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)がペンシルバニアに来て、礼拝堂の建築を進めながらラースローとハリソンの間に確執が生まれる様子を描いていきます。

 俳優でもある監督のブラディ・コーベットはこれが監督3作目ですが、過去2作(「シークレット・オブ・モンスター」「ポップスター」)はいずれも低評価に終わっています。

 ここでパンフレットを読んで愕然としたのはラースロー・トートが架空の人物であるということ。てっきり実在の人物かと思ってました。功績のダイジェストにせず、時代を絞ったのは賢明な処理とも思ったんですが、なんのことはない。そうなのか、フィクションなのか。それと、製作費が1000万ドル(約15億円)という少なさにも驚きました。5000万ドル以上、もしかしたら1億ドルぐらい掛かってるかと思ってました。大作感がなかったのはこのためなのか。監督として大きな実績もないのに、多額の予算の作品をまかせられたのはおかしいなと思ったんですよね。これぐらいの予算規模なら納得です。いや、コストパフォーマンスは抜群だと思います。

 というわけでパッケージングは一流、中身はそこまでではないというのが率直な感想でした。第1部よりもフェリシティ・ジョーンズが(意外な姿で)登場する第2部が面白かったです。
IMDb7.8、メタスコア90点、ロッテントマト94%。ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞。アカデミー賞10部門ノミネート。
▼観客10人ぐらい(公開初日の午前)3時間35分。

「セプテンバー5」

 1972年のミュンヘンオリンピック事件を生中継した米国のテレビ局ABCのスポーツ局スタッフを描くドラマ。なぜ今、この映画を作ったのか、その意図が気になります。公式サイトには「報道のあり方を問う、現代へのメッセージ」とありますが、果たしてそうか? 報道の在り方を問うなら、50年以上前の事件ではなく、今の事件に材を求めてはどうか。ガザで多くの子供を含む4万人以上を虐殺し、なおも攻撃をやめようとしないイスラエル擁護のプロパガンダ的意図があったのではないか、と勘ぐりたくなります。

 ミュンヘンオリンピック事件はパレスチナの武装組織「黒い九月」によって行われたテロ事件。五輪の選手村を襲撃、イスラエル選手2人を殺害し、9人を人質にしてイスラエルと西ドイツに拘束されている328人の解放を要求しました。犯人グループは海外への逃走を図りますが、空港で銃撃戦となり、人質9人含む選手11人、警察官1人、犯人5人が死亡しました。

 ABCのスタッフは選手村からの銃声を聞いて事件発生を知り、現地にいる強みを活かして生中継します。緊張感のあるタッチで悪くはないんですが、それだけで終わってます。驚くのは終盤の出来事で、当初、「人質は全員助かった」と発表され、ABCはそれを真っ先に報じ、他社も後追いしますが、後に「全員死亡」の間違いと分かります。この部分はスティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」(2005年)でも冒頭のシーンで描かれていました。

 アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」(1999年、ケヴィン・マクドナルド監督。DVDタイトルは「ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実」)も間違いの原因については触れていません。恐らく西ドイツ当局の単純なミスだったのでしょうが、これを未確認でそのまま報じてしまったことは後追いした他社も含めて大きな汚点でしょう。

 このドキュメンタリーには事件のその後が描かれています。生き残って逮捕されたテロリスト3人はルフトハンザ機ハイジャック事件の犯人の要求で解放されました。このハイジャック、乗客は12人しかいず、西ドイツ政府が絡んだ茶番だったという説があります。イスラエルは報復作戦を実行し、Wikipediaによると、PLOの基地を空爆して「65人から200人を殺害」し、犯人2人を含む武装組織の20人以上が暗殺されました(「ミュンヘン」はこの報復作戦を描いていました)。残る1人がこの映画のインタビューに顔を隠して登場しています。映画の評価はIMDb7.8、メタスコア82点、ロッテントマト93%。

 「セプテンバー5」がダメなのは「報道の在り方を問う」名目で、一連の経過を無視して局所的な場面しか描いていないからです(タイトル通り9月5日の出来事=イスラエル被害の場面だけ)。だから別の意図を勘ぐりたくなるわけです。

ジム・マッケイ(「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」より)
ジム・マッケイ
 事件を報じる番組でキャスターを務めたジム・マッケイのシーンは当時の放送が使われています。通訳スタッフのレオニー・ベネシュは「ありふれた教室」(2022年、イルケル・チャタク監督)の先生役。

 ドイツはこの事件の後、五輪を自国開催していませんが、2040年大会の開催に関心があるそうです。
IMDb7.1、メタスコア76点、ロッテントマト93%。アカデミー脚本賞ノミネート。
▼観客9人(公開6日目の午後)1時間31分。

「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」

「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」パンフレット
パンフレットの表紙
 20代のドナルド・トランプが凄腕の悪徳弁護士ロイ・コーンに導かれてトップへと成り上がるまでを描く実話ベースの作品。見ていて悪の台頭、というフレーズが頭に浮かびます。たいていの物語で巨悪は倒されて終わるんですが、現実の巨悪はまだまだこれから何をやるのか分かったものではない恐ろしい状況。絶望的な気分になりますが、敵を知ることにもメリットはあるでしょう。

 ロイ・コーンがトランプに教えた勝つための3原則は「攻撃、攻撃、攻撃」「何も認めず、全否定しろ」「勝利宣言をして決して負けを認めるな」。確かに今のトランプはこれを忠実に実行しているように見えます。トランプが負けや誤りを認めた場面など見たことがありませんから。

 映画は前半、ロイの忠実な弟子となるトランプを描いていますが、後半は力関係が逆転します。トランプは師匠を超える存在になっていくわけです。落ちぶれていくロイには悪い奴だと分かっていても悲哀を感じざるを得ません。

 トランプを演じるのはマーベルファンにはウィンター・ソルジャーとしてお馴染みのセバスチャン・スタン。外見と身振り手振り、喋り方をまねて完璧な演技を見せ、アカデミー主演男優賞にノミネートされました。ロイ・コーン役のジェレミー・ストロングも助演男優賞候補。監督は「ボーダー 二つの世界」(2018年)、「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)のイラン出身アリ・アッバシで、今回も的確な演出を見せています。

 タイトルはトランプが2004年から2012年まで司会を務めたNBCのテレビ番組「アプレンティス セレブたちのビジネス・バトル」(WOWOWが以前放送したそうです)からきています。
IMDb7.1、メタスコア64点、ロッテントマト83%。
▼観客9人(公開7日目の午後)

「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」

 「違う惑星の変な恋人」(2023年)の木村聡志監督作品。オンライン試写で見ました。「グリーンバレット」(2022年、阪元裕吾監督)、「さよならエリュマントス」(2023年、大野大輔監督)に続いてミスマガジン受賞者が出演する映画製作プロジェクトによる作品で、2023年の受賞者6人が演じる女の子たちと高校生の代々木ジョニーをめぐる緩い青春群像劇です。ストーリー的にはなんてことないですが、とぼけた会話の微妙なおかしさで好感の持てる作品になっています。

 ちょっと変わった高校生の代々木ジョニー(日穏=KANON)は気の強い今カノ熱子ちゃん(松田実桜)を怒らせてしまったり、スカッシュ部のバタ子さん(加藤綾乃)、神父さん(高橋璃央)と部室でずっと喋っていたり、引きこもり生活中の幼なじみ神楽さん(一ノ瀬瑠菜)に会ったり、マイペースな放課後を送っている。しかし、名ばかりだったスカッシュ部に熱血部員デコさん(吉井しえる)が入部したことで他の部員ともどもちゃんと練習し、いきなり関東大会に出場することになる(スカッシュ部のある高校は少ないから)。ジョニーは宮崎から東京に来て祖父(マキタスポーツ)の喫茶店でバイトしている出雲さん(今森茉耶)と出会い、惹かれ合うようになるが…。

 出演はほかに渡辺歩、前田旺志郎、綱啓永ら。「違う惑星の変な恋人」もそうでしたが、木村監督の作品は会話が秀逸で、元は舞台劇かと思えるぐらいです。ただ、シーンの並列なので物語としてはあと一ひねりあっても良かったかなと思います。

 ミスマガジン2023グランプリの今森茉耶は実際に宮崎出身。今週号(2025年3月10日号)の週刊プレイボーイのグラビアに登場しているほか、始まったばかりの戦隊シリーズ第50作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」でゴジュウユニコーン=一河角乃を演じています。映画は昨年の「あのコはだぁれ?」(清水崇監督)に続いて2本目。清楚なビジュアルは申し分ないので、戦隊の1年間で演技力を磨きたいところです。目指せ、高石あかり。

 映画は3月14日からの大阪アジアン映画祭で上映後、東京で公開、全国順次公開されるようです。1時間48分。

2025/02/16(日)「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」ほか(2月第2週のレビュー)

 アカデミー賞授賞式(日本時間3月3日)はNHKがBSで生放送するそうで、とりあえず良かったです。WOWOWはオンデマンドで生配信もしていましたが、NHKはやらないんじゃないかな。一部を除いて基本的にNHKプラスでBS番組は配信していませんし、BS契約を増やしたいでしょうから。

 Netflixで今月から配信が始まったタイ映画「邪厄の家」(2023年、ソーポン・サクダピシット監督)は「バーン・クルア 凶愛の家」(全国的には昨年11月公開)と同じものです。劇場公開と配信でタイトルが異なるのは困りものですが、たぶん供給ルートが違い、Netflixの担当者も公開作とは知らなかったんじゃないでしょうか。わざとこうする理由は思いつかないです。

それにしても「邪厄」とはあまり聞き慣れない言葉。一昨年5月に公開された台湾ではこのタイトルだったようで、それを参考にしたんでしょうかね?

「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」

「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」パンフレット
パンフレットの表紙
 「アベンジャーズ エンドゲーム」(2019年、アンソニー&ジョー・ルッソ監督)のラストでスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)からキャプテン・アメリカの楯と役割を引き継いだファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の活躍を描くMCU作品。海外での評価はメタメタですが、酷評するほどひどくなく、少なくとも、箸にも棒にも何にも掛からなかったシリーズ第1作「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」(2011年、ジョー・ジョンストン監督)に比べれば、はるかに良いと思いました。

 アメリカ大統領サディアス・ロス(ハリソン・フォード)がホワイトハウスで複数の人間から銃撃される。その中の1人は元スーパーソルジャーでサムの友人イザイア・ブラッドリー(カール・ランブリー)だった。彼らは何者かに洗脳されていたらしい。さらに希少金属アダマンチウムを巡って日本とアメリカはインド洋で一触即発の危機を迎えていた。キャプテン・アメリカは、ファルコンのウイング・ユニットを受け継がせたホアキン・トレス(ダニー・ラミレス)とともに双方の戦闘機の攻撃を必死に食い止め、陰謀を企む黒幕に迫る。

 空中アクションとレッドハルクとの闘いが見どころ。超人血清によってスーパーパワーを持ったスティーブ・ロジャースとは違って、サム・ウィルソンは普通の人間。ウイング・ユニットとスーツを身に着けてもアイアンマンのスーツほどのパワーがあるわけでもなく、普通に考えてハルクに勝てる訳がありません。アンソニー・マッキー自身にスター性が希薄なのもつらいところですが、それはシリーズ第1作のクリス・エヴァンスも同じでした。2作目の「ウインター・ソルジャー」(2014年)が1作目の100倍ぐらい面白かったように、映画の作りと監督次第でどうにでもなるでしょう。次に期待します。

 日本の首相に扮するのは「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス)や「モナーク レガシー・オブ・モンスターズ」(アップルTVプラス)などの平岳大。この映画での日本の役割は今の情勢で考えれば、本当は中国でしょうが、米中開戦は洒落にならないので日本にしたんじゃないでしょうかね。

 監督は「クローバーフィールド パラドックス」(2018年)、「ルース・エドガー」(2019年)のジュリアス・オナー。マーベル映画の常でエンドクレジットの後におまけのシーンがありますが、マルチバースをめぐるもので、これ、今後につながるのですかね? 以前の設定の名残のような気もします。製作が始動したといわれる「アベンジャーズ ドゥームズデイ」(アンソニー&ジョー・ルッソ監督)と「シークレット・ウォーズ」(同)もマルチバースものになるのでしょうか。

 「インクレディブル・ハルク」(2008年、ルイ・レテリエ監督)以降、サディアス・ロスを演じていたウィリアム・ハートは2022年に死去。ハリソン・フォードがそれを引き継いだわけですが、82歳のフォードには引退説も流れています。
IMDb6.0、メタスコア43点、ロッテントマト51%。
▼観客多数(公開2日目の午前)1時間58分。

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞」

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞」パンフレット
パンフレットの表紙
 1980年代の香港・九龍城塞を舞台にしたアクション。かつての香港映画の熱気があるとして評判を呼んでいますが、個人的にワイヤーアクションにはあまり興味がないこともあって、映画の出来としてはまずまずと思いました。九龍城塞の外観をCGで、内部を巨大なセットで再現していて、これが一番の魅力となっています。

 香港へ密入国したチャン(レイモンド・ラム)は黒社会のルールを拒み、己の道を選んだために組織に目を付けられる。追い詰められたチャンは巨大スラム街・九龍城砦に逃げ込み、そこで3人の仲間と出会い、深い友情を育む。しかし九龍城砦を巻き込む抗争が激化し、チャンたちは命を賭けた戦いに挑んでいく。

 アクション監督は谷垣健治、音楽を川井憲次が担当しているのはファンとしてはうれしいです。監督は「ドラゴン×マッハ!」(2015年)などのソイ・チェン。大ヒットしたので前日談や続編の計画もあるそうです。

 パンフレットはクリアファイル付きで1200円でした。amazonでは4000円とか5000円とかで売ってますが、バカバカしいので劇場で買った方が良いです。入場者プレゼントのポストカードまで売ってるのがあきれますね。
IMDb7.0、メタスコア77点、ロッテントマト90%。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午後)2時間5分。

「港に灯がともる」

 監督の安達もじりは放送中のNHK夜ドラ「バニラな毎日」や再放送中の朝ドラ「カーネーション」(2011年)「カムカムエヴリバディ」(2021年)などの演出家。本作はNHKドラマを再編集した前作「心の傷を癒すということ 劇場版」(2020年)に近い内容です。

 阪神・淡路大震災の翌月に神戸市長田で生まれた在日韓国人三世の灯(富田望生)は20歳。在日の自覚は薄く、震災の記憶もない灯は父(甲本雅裕)、母(麻生祐未)が語る家族の歴史や震災当時の話が遠いものに感じられ、苛立ちを募らせる。父は家族との衝突が絶えない。結婚間近の姉の美悠(伊藤万理華)が提案した日本への帰化を巡り、父親との対立がさらに深まる。灯は鬱状態になり、勤めていた造船所を退職。小さな建設会社に入る。

 と、ここまで書いてパンフレットの「企画の始まり」のページを読んだら、この映画はプロデューサーの安成洋の発案から始まった、とありました。安プロデューサーの兄は「心の傷を癒すということ」(1996年)を書いた精神科医・安克昌。神戸、震災、在日のテーマが共通しているのはそのためなのでした。

 異なるのは主人公が震災を経験したか、しなかったかの点。ドラマ「心の傷を癒すということ」(全4話)は震災で深い心の傷を受けた人たちの治療に当たる安医師(柄本佑)を描き、心の傷の苦しさ辛さをよく伝える内容でしたが、この映画はそれが間接的な分、主人公の苦悩が分かりにくくなっています。そして、39歳で亡くなった安医師がこのドラマの中で3人目の子供に付けた名前が灯でした。

 この映画の主人公が安医師の娘と同じ名前なのは安達監督(あるいは安プロデューサー)が関連作として意識したからでしょう。灯の苦しみは主に父親との確執が原因となっていますが、父親が経験してきた苦難は娘に実感として伝わっていません。だから最後まで父娘はわかり合えないままになっています。それと同じようなことが主人公と観客の間にもあるようで、富田望生の役に入り込んだ熱演は空回り気味に感じました。これは富田望生が悪いわけではなく、単に脚本(安達もじり、川島天見)の説得力の問題だと思います。

 大震災から30年ということもあって、「心の傷を癒すということ」の新増補版(2019年)は先月、NHK「100分de名著」で取り上げていました。
▼観客多数(公開5日目の午前)1時間59分。

「占領都市」

「占領都市」パンフレット
「占領都市」パンフレット
 1940年から5年間、ナチスドイツに占領されたオランダ・アムステルダムの状況をナレーションと現代の映像で描くスティーブ・マックイーン監督作品。

 原作の「Atlas of an Occupied City」はマックイーン監督の妻で歴史家のビアンカ・スティグターの著作。マックイーンは2005年に短いバージョンが発表された際に映画化を考えたそうです。アムステルダムには当時、アンネ・フランクをはじめ多くのユダヤ人が住んでいましたが、その多くは収容所に収容の末に殺されたり、病死したりしました。街の至る所でもドイツ兵に殺されていて、スティグターは彼らがどのように死んでいったのかを調査したそうです。

 ナレーションで何度も繰り返されるのは“Demolished”という単語。取り壊された、消滅した、解体されたという意味で、建物や場所、人々など多くのものが占領下でなくなってしまったことを象徴しています。撮影はちょうどコロナ禍の時で、善意の“マスク警察”の人たちがマスクを着けるように道行く人たちに注意する場面があり、占領当時にナチスの手先になった人たちと重なります。

 4時間11分、退屈はしませんが、当時の映像を一切入れないことにこだわる必要もなかったのではと感じました。
IMDb6.7、メタスコア76点、ロッテントマト72%。
▼観客5人(公開6日目の午後)4時間11分。

2025/02/09(日)「ファーストキス 1ST KISS」ほか(2月第1週のレビュー)

 小学校を長期取材したドキュメンタリー「小学校 それは小さな社会」(山崎エマ監督、1時間39分)の短縮版(23分)はアカデミー短編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、YouTubeで公開されています。

 残念ながら本編の方は見逃しましたが、これはその中から入学式の演奏でシンバルを担当することになった1年生の女の子をめぐるエピソードをピックアップしたもの。練習が足りないことを先生に叱られて泣き出してしまった女の子が立派に演奏できるまでのクラスメートや先生とのかかわりを描いています。タイトルの「Instruments of a Beating Heart」(直訳すると、「鼓動する心臓を持つ楽器たち」)の意味は最後の方に出てきます。
「ねえ、私たちって何なんだろうね」
「心臓、の一部? 私たちは心臓のかけらで、みんながそろったら、こんな形(ハート)になる。で、一人、こんな風にずれたら、もう心臓はできないの」
「本当だよ、私たちは過酷な楽器だよ」
 これが2年生になったばかりの子供たちの会話です。感心します。「小さな社会」なわけです。

 同じく短編ドキュメンタリー候補の「ザ・レディ・イン・オーケストラ: NYフィルを変えた風」と短編実写映画賞候補の「アヌージャ」、歌曲賞候補の「6888郵便大隊」はNetflixが配信しています。

「ファーストキス 1ST KISS」

 よくあるタイムトラベルもの、ループものなのに主人公2人の会話で構成するクライマックスが見事すぎて参りました。ベテランの力量を徹底的に見せつける脚本(坂元裕二)の説得力。これは海外に通用する高いレベルの脚本だと思います(だから坂元裕二は「怪物」でカンヌの脚本賞取ったのですが)。積極的にループすることを除けば、そのアイデアは普通のものなのに、こんなにオリジナルな映画ができるのが驚きで、中盤の少しの緩みを補って余りあるクライマックスの充実ぶりにひたすら感心しまくりました。

 結婚して15年になる硯カンナ(松たか子)は夫の駈(松村北斗)を電車事故で失う。駈は線路に落ちたベビーカーの赤ちゃんを助けようとして犠牲になったのだ。夫婦生活は冷え切っていて、駈はその日、離婚届を出す予定だった。数カ月後、カンナは首都高のトンネル内で車の運転を誤る。気がつくと、どこかのリゾート地にいた。そこは15年前、2009年8月1日のリゾートホテル。駈とカンナが出会った場所だった。45歳のカンナはそこで29歳の駈に出会い、かつての恋心を思い出す。駈の事故死を防ぐため、カンナは何度もタイムトラベルし、あらゆる手段を講じて事故当日の駈の行動を変えようとするが、すべて失敗に終わる。そして駈を救う唯一の方法は自分たちが出会わず、結婚しないことしかないと結論する。

 「神様どうか私たちが、結ばれませんように」というこの映画のコピーは秀逸ですが、映画はそれ以上に優れたクライマックスを用意しています。坂元裕二はパンフレットのインタビューで「今回描きたいと思ったのは、タイムトラベルをひとつの入り口として、人と人との関係をもう一度やり直すことです」と話していますが、その通りの展開になっていきます。

 同じく坂元裕二脚本の「花束みたいな恋をした」(2020年、土井裕泰監督)では絹(有村架純)と麦(菅田将暉)が麦の就職以降、徐々にすれ違っていく様子が描かれていましたが、この映画ではカンナと駈が口げんかの果てにパンとご飯の朝食を別々に作って別の部屋で食べ、それぞれのベッドで寝るようになるという家庭内別居のような状況を描いています。ロマンティックなだけの浅薄なラブストーリーではなく、厳しさを併せ持った心にしみるドラマになっているわけです。

 ユーモアを絡めたこういう優れた脚本があれば、ある程度の映画にはなるものですが、塚原あゆ子監督はさらに的確な演出で冒頭の事故のシーンから観客を引き込み、感情を揺さぶる傑作に仕上げました。「中盤の少しの緩み」と書きましたが、脚本を読むと、中盤にダレ場はありません。演出の緩急の付け方にほんの少しの計算違いがあったということなのでしょう。

 心に残ったセリフをいくつか上げておきます(シナリオブックから引用)。
 ロープウェイの中での駈とカンナの会話。
「恋愛感情がなくなると、結婚に正しさが持ち込まれます。正しさは離婚に繋がります」
「恋愛感情をなくさなければ」
「恋愛感情と靴下の片方はいつかなくなります」
 駈からパーティーに誘われる場面。
「わたし、45歳です」
「それが何か?」
「29歳の男性は45歳の女性とはパーティーに行かないものです」
 そしてクライマックス。なぜ2人の仲が悪くなったか説明する場面。
「なんでじゃないの。だからなの。いい? 好きなところを発見し合うのが恋愛でしょ。それはわかるよね。嫌いなところを見つけ合うのが結婚」
 そうした夫婦の行き着く先を2本のボールペンで説明するカンナ。
「ボールペンが二本あります。お互いに期待しない。感情も動かない。無の状態。これが夫婦の行き着くところです」
 シニカルでユーモアのあるセリフの数々。坂元裕二、なんでこんなに巧いんだ、分かってるんだと思わざるを得ません。それを活かしているのが松たか子のコメディエンヌとしての資質で、松たか子は若い頃から一流のコメディエンヌの側面を持っていました。おかしさとロマンティシズムがあふれるタイトルのファーストキスの場面にもそれが発揮されています。

 カンナの20代の場面は以前の松たか子の輝くような美しさを驚くほど再現していて、これはほうれい線を隠すなどのメイクだけではなく、CGを使っているのかもしれません。
▼観客多数(公開初日の午前)2時間4分。

「フード・インク ポスト・コロナ」

「フード・インク ポスト・コロナ」パンフレット
パンフレットの表紙
 アカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「フード・インク」(2008年)の続編。前作ほどのショッキングさはありませんが、食に関する危険のほか、生産現場の奴隷労働並みの実態など学びのある内容となっています。

 特に警鐘を鳴らしているのは前作以降に急増した超加工食品。「添加物、人工甘味料、合成香料などを化学的に調合した」食品で、健康に影響を及ぼすとされています。フェアな労働による自然農法で生産された食品を加工せずにそのまま調理して食べるのが健康を維持することになるのでしょう。

 監督は前作に続いてのロバート・ケナーと前作を共同プロデュースしたメリッサ・ロブレドの共同監督となっています。
IMDb6.8、メタスコア70点、ロッテントマト79%。
▼観客7人(公開6日目の午後)1時間34分。

「366日」

 沖縄出身バンドHYの名曲「366日」にインスパイアされた赤楚衛二、上白石萌歌主演のラブストーリー。

 「ファーストキス 1ST KISS」の見事な脚本に比べると、大きく見劣りがします。一応、つじつまを合わせただけの内容。それだけでいっぱいいっぱいな感じです。脚本家デビューの福田果歩、これがスタート地点で、ここからどう洗練していくか、磨き上げていくかが勝負でしょう。少なくとも、2度も難病を出す設定は回避する手段がいくらでもあったと思います。

 共演は中島裕翔(良い役柄です)、玉城ティナら。監督は「矢野くんの普通の日々」(2024年)など青春映画が多い新城毅彦。
▼観客多数(公開28日目の午後)2時間3分。

2025/02/02(日)「リアル・ペイン 心の旅」ほか(1月第5週のレビュー)

 週刊文春のミステリーレビューで書評家の池上冬樹さんが「少年の君」(2019年、デレク・ツァン監督)の原作を高く評価(★4.5個)しています。昨年11月、新潮文庫から出た本。レビューを引用すると、「ミステリ色も強く、映画よりもはるかに複雑で面白い。結末が違うのだ。独自のサスペンスが横溢していて、刑事と少年と少女の息詰まる対決は、一体どこに転がるのかとはらはらする。(中略)何と激しく美しい恋愛ミステリだろう。充分に抑制がきいてるがゆえに、思いが行間から溢れてくる」。

 気になったので書店で買ってきました。カバーにある著者(玖月晞=ジウ・ユエシー)の写真を見て、女性だったのかとびっくり。映画はデレク・ツァン監督の男視線で描かれていましたからね。それと巻末の解説に「中国語の『少年』は少女の意味も含む」とあって、なるほどと思いました。少年よりも少女(チョウ・ドンユイ)の方がメインと思えましたから。

「リアル・ペイン 心の旅」

「リアル・ペイン 心の旅」パンフレット
「リアル・ペイン 心の旅」パンフレット
 俳優ジェシー・アイゼンバーグの監督第2作。監督に専念した前作「僕らの世界が交わるまで」(2022年)より内容も演出も深化した感があり、アカデミー賞で助演男優賞(キーラン・カルキン)と脚本賞(ジェシー・アイゼンバーグ)の2部門にノミネートされています。

 ニューヨークに住むデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は誕生日が2週間違いのいとこ同士。デヴィッドはIT業界で働き、ブルックリンの自宅に妻と子供がいる。ベンジーは情熱的でチャーミング、自由奔放で人を魅了するが、どこか危うさを持ち合わせていた。兄弟同然に育ち、近年は疎遠になっていたが、数年ぶりに再会。亡くなった祖母の遺言で、彼女の故郷ポーランドのツアー旅行に参加することになる。ユニークなツアー参加者と交流するなか、正反対の性格であるデヴィッドとベンジーは騒動を起こしながらも、彼ら自身の“生きるシンドさ”に向き合う。

 パンフレットによると、原題の「A Real Pain」には「本当の痛み」のほかに「困ったやつ」という意味があり、「自分を困らせる人に使う表現」とのこと。明らかにベンジーを指しているわけですが、誰とでも親しくなる半面、他人の迷惑を顧みないベンジーは心に傷を抱えて不安定な精神状態にあることが徐々に分かってきます。それをキーラン・カルキンは陰影豊かに演じています。

 精神的に不安定なのはデヴィッドも同じようなのですが、デヴィッドには妻子がいることが大きな違いになっているのでしょう。2人は兄弟同然に育ったから親しいのではなく、ともに不安定な状態にあることを含めて相手のことがよく分かっているから親しいのでしょうね。

 結果がどうなるかは分かりませんが、キーラン・カルキンもジェシー・アイゼンバーグも賞に値する力を見せていると思います。
IMDb7.1、メタスコア86点、ロッテントマト96%。
▼観客9人(公開初日の午後)1時間30分。

「お坊さまと鉄砲」

「お坊さまと鉄砲」パンフレット
「お坊さまと鉄砲」パンフレット
 「ブータン 山の教室」(2019年)のパオ・チョニン・ドルジ監督が初めての選挙に戸惑う人々を描いた監督第2作。お坊様が鉄砲をいったいどうするんだという興味が物語を引っ張りますが、その理由が分かるラストはメルヘンチックだなと微笑ましくなる一方で、純朴で真っ当な考え方との思いも強くします。こういう考え方であれば、戦争は避けられるはずなのです。

 2006年のブータン。国王の退位によって民主化への転換を図るため、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることになる。周囲を山に囲まれたウラの村の高僧ラマ(ケルサン・チョジェ)はこの報を聞くと、次の満月までに銃を二丁用意するよう、若い僧タシ(タンディン・ワンチュク)に指示する。そのころ、“幻の銃”を探しに銃コレクターのロン(ハリー・アインホーン)がアメリカからやって来て、村人から古い銃を購入しようとしていた。

 ブータンはかつて国民の幸福度が高い国として知られていましたが、2019年のランキングでは156カ国中95位にとどまり、それ以来、ランキングに登場していないそうです。幸福度は他者との比較で左右されることが多く、素朴なブータンの人たちも外国の豊かな情報に触れると、自分の今の環境と比較してしまうのかもしれません。

 ドルジ監督はパンフレットでこの映画のテーマを「無垢」の価値としています。「残念なことに私たちがより近代的で教育水準の高い国へと変化し移行するにつれ、この美しい価値は失われ、捨て去られつつあります。現代人には『無垢』と『無知』の違いを区別できないのでしょう」

 監督の父親は外交官で監督自身も外国に住むことが多かったそうです。ブータンに対して第三者的視点を持ち、その価値をよく知っているからこそ、前作や本作のような寓話的側面を持った作品が生まれるのでしょう。ブータンの実情に沿わない面もあるのかもしれませんが、「無垢の価値」の訴えには十分に共感できました。
IMDb7.2、メタスコア74点、ロッテントマト94%。
▼観客11人(公開5日目の午後)1時間52分。

「嗤う蟲」

「嗤う蟲」パンフレット
「嗤う蟲」パンフレット
 田舎の村に移住した若い夫婦が村の秘密に触れて恐怖にさらされるスリラー。宇田川寧プロデューサーと脚本の内藤瑛亮(「ミスミソウ」「毒娘」)が2019年頃から企画し、脚本には城定秀夫監督も加わっています。移住者を最初は歓迎しますが、村の掟に従わないと、すぐさま排斥=村八分するというのは実際にありそうです。問題は村の秘密がリアリティーを欠くこと。それに関連するクライマックスも屋内ならともかく、屋外でこれは無理だろうと思えました。

 イラストレーターの杏奈(深川麻衣)は脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。自治会長の田久保(田口トモロヲ)を過剰なまでに信奉する村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも、新天地でのスローライフを満喫する。杏奈は村民の中に田久保を畏怖する者たちがいることに気づく。輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された掟を知ってしまう。

 この題材なら「理想郷」(2022年、ロドリゴ・ソロゴイェン監督)の方がリアルに振って、というか実話の映画化ですが、よく出来ていました。城定秀夫監督はパンフレットで「村八分に遭うが、村から逃げない」展開にリアリティを持たせることが難しく、夫が心理的に村に取り込まれていく展開にしたと述べています。「理想郷」のように逃げたくても全財産はたいて移住したので無理という展開でも良かったのではないでしょうかね。
▼観客2人(公開6日目の午前)1時間39分。

「怪獣ヤロウ!」

 岐阜県関市のご当地映画。市役所の観光課に勤め、何をやってもうまくいかない山田一郎(ぐんぴぃ)は、市長(清水ミチコ)から市を盛り上げるためのご当地映画の製作を命じられる。凡庸なご当地映画の製作に疑問を持った山田は、子供の頃からの夢だった怪獣映画の製作を思いつく。

 Wikipediaによれば、ご当地映画は「ある特定の地域を主要な舞台にしてドラマが展開していく映画作品を指す」。ただ、最近は地元の自治体が中心となって地域のPRのために作る場合が多いようです。ご当地映画=自己満足なだけでつまらん、という場合が多く、つまらない映画を作ってもPRにはならないんじゃないかと思います。

 この映画は頑張ってる方で、手塚とおる、菅井友香、三戸なつめ、麿赤兒らキャストもそろえてますが、特に褒めるところはなく、フツーの出来でした。監督・脚本は岐阜県出身で、「実りゆく」(2020年)の八木順一朗。
▼観客6人(公開初日の午前)1時間20分。

「ナイト・オブ・アルカディアン」

 ヒューマントラストシネマ渋谷で先月から特集している「未体験ゾーンの映画たち2025」で上映した作品をU-NEXTで配信しています。これはその1本。ニコラス・ケイジ主演で予告編に少し興味を引かれたので見ました(U-NEXTでは2月23日まで有料配信)。

 夜に現れる謎の生物が跋扈する世界で生きる父子のサバイバルを描くサスペンスホラー。謎の生物とはモンスターですが、これが何なのか劇中で詳しい説明はありません。「奴らは地球が汚染された後に出現した。今、地球は随分きれいになった」とケイジが言いますが、それならモンスター、いなくなってもいいんじゃない? で、このモンスター、夜になると、多数の群れとなって襲ってきます。モンスターの造型は悪くないと思いますが、口を高速にパクパク、ガクガクするのが安っぽいです。

 ニコラス・ケイジは序盤で重傷を負って、寝たきりとなり、クライマックスに回復してモンスターを撃退します。若い俳優たちばかりだと、映画に重みがないので重し代わりに登場させたような扱いですね。モンスターと物語の背景をもう少し練った方が良かったと思います。監督は「ダーティー・コップ」(2016年)でもケイジと組んだベンジャミン・ブリューワー。
IMDb5.5、メタスコア57点、ロッテントマト78%。1時間32分。